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TONE BLUE
兵庫県神戸市

水井店長

決して大きな店ではありません。通りからも店は見えません。狭い階段を3階まで昇るとそこにいつも水井店長がいます。一度お会いして話をすると、なぜここにプロミュージシャンの方々や本物を求めるお客さんが集まるかが分かります。地元だけでなく、今や東京やその他多くの遠方の楽器店さんたちも意識して注目するお店となりました。その理由がこのインタビューで少しでもお分かり頂ければ嬉しいです。

PCI:トーンブルーさん設立の経緯からお伺いしたいと思います。お店をオープンされたのはいつでしたか?

水井:1997年、11月23日です。オープンして丸6年になります。

PCI:その前は何をされていたんですか?

水井:地元、神戸の楽器店に12年勤めていました。

PCI:どういうきっかけでご自分のお店を出すことになったんでしょうか?

水井:自分の店を持ちたいという夢は前々から抱いていましたが、どういうスタイルでやるかというのは随分迷いました。今までの既存の店とは違ったスタイルのギターショップを出したかったんです。その気持ちが固まった時に色々な条件も重なり店を出すことにしました。

PCI:具体的に既存店とはどういう違いを出そうと苦心されたんでしょうか?

水井:メジャーな物で同じ土俵で他の楽器店さんと競合するつもりはのっけから無かったんです。フェンダー、ギブソン、マーチン、いわゆる3本柱はこっちに置いといて、実際僕が得意な物は何なんだろうと見つめ直したんです。やっぱり自分の店なんで、自分が気に入った物、自分の好きなミュージシャンが使っている様な物、そういう物を全面に打ちだして行こうと思いました。それで色々チョイスをして現在に至ります。

PCI:現在の主力商品は、ギターでは何でしょうか?

水井:今は未曾有の不況ですのでなかなかこれというのは難しいんですけれど、今うちでモディファイしているフェンダー・ジャパンが好調です。 

PCI:どんなモディファイをされてるんですか?

水井:ちょっと話が前後しますが、実はもう1人、リペアをやってくれているスタッフで榎本というのがいるんです。なかなか腕利きなんですよ。彼がいるからこの店も成り立っています。彼がこの店の特色を出してくれていまして、ほんと、縁の下の力持ちです。 

PCI:榎本さんがフェンダー・ジャパンのモディファイをされているんですね?

水井:そうです。彼にはかなりの技術があるので、他の店がやっているモディファイとはちょっと違うアプローチをしています。弾きやすさと音質の良さを念頭において工場生産品に職人の息を吹きかけたというものです。ネックの部分を仕上げ直し、フレットまで替えているんですよ。

PCI:かなり大掛かりなモディファイですね。

水井:かなりやってます。よそと違って「だれだれモデルに近づけました。」とかいうレベルでは無いんです。とにかく弾きやすさと音質重視でモディファイしています。 

PCI:ここまで大掛かりだと量産するのは難しいですね。

水井:そうですね。1人でやっているので、正直な所モディファイ物が一本売れると、次のを置くのにしばらく時間がかかります。ただこれをやっていることで、フェンダー・ジャパンのユーザーがものすごく多いことに気づいたんです。こうしてモディファイ物を置いておくとですね、「僕のギターもこうして下さい。」とフェンダー・ジャパンを持ってこられるお客さんが大変増えて来たんです。おかげさまで現在大変忙しい状況です。神戸市内でも塗装まで自分で完全にやっちゃうっていうのは、多分うちだけだと思います。

PCI:他の店にない強みですね。 

水井:大手さんに出来ないフットワークの軽さが強みですかね。

PCI:オリジナルブランドのギターも作ってますよね?

水井:はい。 あれもリペアの榎本が作っているので、一人ですから数は出来ませんし、買って頂いている方が彼のリペアのクオリティーを気に入って頂き、それじゃギターもというノリで超スローペースで作っているというのが現状です。いいギターなので今後もう少し広めていきたいと思っています。

PCI:トーンブルーさんモディファイのフェンダー・ジャパン、最近あちこちで評判ですよ。

水井:口コミで広まっている様です。「リペアをやってます。」と宣伝など打ったことはないんですよ。それから、ELTのバックをやっている名ギタリスト加藤薫さんが実際に使って頂いていまして2本目、3本目のオーダーも頂いているんです。

PCI:加藤さんのインタビューもPCIのサイトで掲載していますが大変気に入っておられました。

水井:加藤さんが使っているということで、熊本のお客さんとか神奈川とか北海道とかからもリペアの要望が来る様になったんですよ。

PCI:それはすごいですね。実際トーンブルーさんのお話は東京や遠方でもよくお聞きします。今やもう全国区の楽器店さんになりつつありますね。

水井:そうでしょうか? 

PCI:ホームページもこまめに更新されている様ですからヒット数も増えているんじゃないですか?

水井:確かにカウンターの数字の上がり方が最近すごいんですよ。

PCI:今後の展開が楽しみですね。アンプの方は如何ですか?

水井:アンプの主力はDr. Z Ampですね。 気に入っているので押してますよ。

PCI:エフェクターの動きはいかがですか?

水井:全体的にはちょっと停滞気味かもしれません。物によってすごい勢いで売れたりパっと止まったり鮮度みたいなのがあります。良い物でも一回りすると動きが止まってしまいますね。その辺の見極めがちょっと難しいです。ただ僕の気に入っている物は一回りした後もずっと続けて売っていけます。PCIの扱っているエフェクターのセレクションはどういう基準で選んでいるのか分りませんが、すごくいいと思います。最近ではXotic Effectsがいいですね。大変気に入っています。

PCI:実はXotic Effectsは日本よりアメリカ、ヨーロッパで人気が高いんです。プロのミュージシャンの試奏ビデオが好評でした。 

水井:あのビデオは説得力がありますね。マイケル・トンプソンを好きなお客さんもあのビデオを見てXotic Effectsを早速買っていかれました。

Parts類も充実しています。

PCI:弦も各種扱ってみえますが、動きはどうですか?

水井:弦は大きな楽器店さんが近場にありますから、やはり皆さんそちらで買われてしまいますね。 有名ブランドの弦はあまりやっても意味が無いと思っていますが、リペアとかで指定のある場合に供えて一応置いています。 

PCI:Arkayの弦は如何ですか?

水井:Arkayはいいですよ。リピーターが大変多いです。使った人はその良さと他社製との違いがすぐ分りますから。3セット入ったバリューパックというのはいいですね。 

PCI:アメリカのArkay社は、メインの仕事は有名ブランドのOEM生産なんです。もしかしたらここにある有名ブランドの弦のいくつかも実際は彼らが作っている物かもしれません。どのブランドの物を作っているかは契約上の極秘事項でArkay社は絶対に言いませんが。彼等が長年のOEM生産の経験の中からいいとこ取りとして作った自社ブランドの弦がArkayなんです。 

水井:それじゃいい弦が出来る訳ですね。使っているお客さんから良く聞く話は、ストラトに張ると絶妙なテンション感とのことです。 

PCI:やはり口コミで良さが広がりつつある様です。ではまたお店の話に戻りますが、この場所を選んだ理由は何ですか?

水井:やっぱりどうしても神戸に出したかったんです。神戸って昔から大物ミュージシャンが出ていたんです。大村憲司さんを筆頭に。でも僕等の世代からだんだん少なくなってきました。本気で音楽をやってる人に答えたい、そして大阪へ行ってしまった人達を少しでもこっちへ戻って来させたいと思ったんです。僕も真剣にやるからちょっとこっちを向いてくれって感じです。 

PCI:この辺りが神戸では中心になるんですね?

水井:そうですね。僕にとって元町、三の宮は店を出す場所としては最重要な場所でした。 

PCI:先程お聞きしたモディファイギター、リペアに加えてトーンブルーさんのモットー、セールスポイントなどを教えて下さい。

水井:お客さんの考え方はもちろん尊重するんですが、僕もやっぱりプレイをしたい方の人間だったので、その経験を活かしてお客さん一人一人に本当に合った商品をお勧めしたいと思っています。人間の手の大きさも体の大きさも違う訳ですから。実はそれで自分が失敗してきたんです。憧れだけで買ったものは結局弾きにくいとかね。(笑) 

PCI:一人一人のお客さんの話を聞いて当初のご希望とは違ったとしても、本当に合った物をお探しするということですか?

水井:そうです。じっくり話込んでね。また、そういうことが出来るスペースだと思うんですよ、この店は。 

PCI:品揃いへのポリシーは?

水井:中古以外は僕が気に入った物しか置いてありません。当たり前のことですが、本当に良いものだけを勧めて行きたいと思っています。 

PCI:中古のお話が出ましたが、中古品の商売も増えているんですか?

水井:最近中古の需要は伸びていますね。結構持ち込みも多いんですよ。良い物が手に入れば買っています。最近は遠方から送ってくるケースもあるんです。実はうちは中古の回転が早いんですよ。うちのサイトをよく見ているインターネットマニアの間では、うちの中古の回転が早いことは気がついておられる様です。うちの場合リペア、メンテがしっかりしているので、中古もうちから買えば安心ということでしょう。今まで中古を売ってトラブったことは一度もありません。 

PCI:お店に来られるお客さんの層はどんな方が多いんですか?

水井:圧倒的に30代の方が多いです。僕と同じ世代ですから話しやすいのかもしれませんね。去年から休みを日曜日にしているのもそのためです。5年間実績を見て判断したんですけど、うちの場合日曜日はお客さんがたいへん少なかったんです。その前、楽器店に勤めていた12年間、日曜日に休んだことなんて一度もなかったんです。だから日曜日を休みにするのはちょっと勇気が要りました。

PCI:日曜休みにして1年経った今、結果は如何でしたか?

水井:ばっちりでした。無駄が無くなったんです。木曜休みにしていた時は、金曜日に来るとメールが大量に入っているし留守電も一杯だったんですが、今月曜日に店に来てもたいしたことないんです。 

PCI:他の楽器店さんとは明らかにお客の層が違うということですね。

水井:そうですね。一応日曜休みにする前に常連さんには相談したんですよ。そしたら皆賛成してくれました。うちに来るお客さんは大体30代でバンドをやっている人が多いんですが、サラリーマンがほとんどで皆さん日曜休みなんです。それで日曜日に練習するんですね。そして次の日曜日はファミリーサービスなんです。日曜日に楽器店に来る暇は無いんです。

PCI:そういう常連さんは平日の夜お店に来られるんですね。

水井:そうですね。後は大きな声では言えませんが、東京や大阪から出張で来たついでに昼間に寄って頂ける方も結構多いです。 

PCI:どういう音楽をやっている方が多いんですか?

水井:特色としては他の楽器店さんに比較してジャズ、フュージョン系の人が多いと思います。

PCI:それは水井さんがお好きだからですかね?

水井:僕も好きですが、店をオープンするに当たって色々な人に声をかけたんですけど、神戸市灘区に甲陽音楽学院さんというバークリー音楽院と提携されている学校があるんです。学長も良く知っています。そこの講師の方々がジャズ好きなんで、その取り巻きの人達とかが良く来られる様になったんです。生徒さん達もよく来られますよ。それから神戸は意外とブルース好きの人も多いんです。僕達よりちょっと上の世代で例えば50歳以上でこの辺のライブハウスでガンガンやっているお客さんも結構いますよ。 

PCI:ライブハウスもたくさんあるんですか?

水井:あります。今でも神戸は音楽が大変盛んだと思います。 

PCI:それから加藤薫さんを始めプロミュージシャンの方々もたくさん来ると伺っています。

水井:それは本当に感謝しています。どういう訳かプロミュージシャンの方々の来店は多い様です。ただ来て頂いても僕がプロの方々に気づかないことも良くあるんです。お客さんに教えてもらって気がつくことも多いんです。(笑)それから近くにチキン・ジョージと国際会館があるので、リハの合間とかにプロの方々が寄って下さるんです。

PCI:水井さんご自身のお話も少しお聞きしたいのですが、ずっとギターは弾いて来られたんですね?

水井:そうですね。売るより弾く方が好きなんです。

PCI:最初はどんな音楽でギターを始めたんですか?

水井:最初はアリスですね。「冬の稲妻」、3コードから入りました。「モーリス持てばスーパースターも夢じゃない。」というコピーが流行った世代ですから。(笑) 

PCI:その後エレキギターも?

水井:そうですね。高校ではエレキを持ってジェフ・ベック、ツェッペリン、クラプトンを良く聴いてコピーしました。その後高校2年の頃から空前のフュージョンブームがやってきました。その頃はカシオペアなどもコピーしましたね。ギターを弾くことが好きなんで、あまりジャンルには捕らわれず色々な音楽をやりました。

PCI:今はどんな音楽を弾いてるんですか?

水井:今はブルース基調の物が好きです。PCIのインタビューに載っているミュージシャンの人達は大好きな人ばかりですよ。リアルタイムということですとTOTOが、僕が高校生の時に出てきてフュージョンブームの前にAORのブームがありました。その時はボズ・スギャッグスとかスティーリー・ダンもかなり聴きました。そういうのを聴いていると、誰がギターを弾いているかと気になるんです。そうするとラリー・カールトンとかスティーブ・ルカサーとかが出てきてそっちの方の音楽にのめり込んでいきました。この辺りのギタリストの本音が読めるPCIサイトのインタビューコーナーは大変面白いです。

PCI:そしてそういう音楽が好きなお客さんが自然とこの店に集まる様になるんですね。

水井:そうですね。話も合いますからね。実は先程話した加藤薫さんも僕と同い年で聴いている物がほとんど同じで盛り上がっちゃいますよね、やっぱり。

PCI:加藤さんは今はELTのバックのお仕事がメインなんですか?

水井:基本的にはスタジオの仕事が多いそうです。しかもAVEXレーベルの売れっ子アーティストの録音が多い様です。それだけ引き出しも多いギタリストなんだと思います。 

PCI:それでは最後にPCIサイトの読者に付け加えるメッセージがあればお願いします。

水井:そうですね。インターネットもいいですが、「皆さん、是非地元の楽器店にもっと出向いてください!」と言いたいです。インターネットは確かに便利なんですが、便利過ぎて情報過多になっていて、また間違った情報も氾濫しています。間違った情報をうのみにして、とんでもない勘違いをしている方が最近多いんです。地元のちゃんとした楽器店に行って、生のリアルな情報を入手することをお勧めします。 

PCI:同感です。今回の企画「楽器店巡りの旅」では、そういう地元密着型のちゃんとしたお店を出来るだけ多くの方々に知って頂こうと思っています。 

水井:いい企画ですね。それからミュージシャンの方々の中には今でもパソコンやインターネットに無縁のアナログな人も結構多いです。うちの場合はとにかく気楽にお店に来て頂ければ、どんなことでも間違っていることは間違っていると言いますし、いつも正しい情報を皆さんにお伝えできるようにしています。そして知らないことも知らないとはっきり言います。気楽に何でもおしゃべりが出来る楽器店を近くに見つけることができるといいんじゃないでしょうか。

PCI:是非そういうお店をPCIとしてはどんどん紹介していきたいと思います。本日は長時間本当にありがとうございました。(9/15/2003)

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