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 Larry Carlton インタビュー

 

新アルバム Sapphire Blueの発売に合わせて日本ツアーへ飛ぶ直前に電話インタビューが可能になりました。短い時間でしたが、丁寧に質問に答えて頂き気さくな温和な印象を受けました。あまり知られていない最新情報が少しでも伝われば嬉しいです。(2003年6月24日)
ラリー・カールトンのサイトはこちら↓です。
http://www.larrycarlton.com/


PCI:日本へ出発前の忙しい中時間を取って頂き有り難うございます。
あなたについては、かなりの量の情報が既に雑誌などで日本に紹介されています。できるだけ日本であまり知られていないと思われる質問を集めてみました。順不同になりますが宜しくお願いします。

Larry:OK。何でも聞いてください。

PCI:今はナッシュビルに住まれていますが、ロサンゼルスでの生活、音楽活動との違いは何でしょうか?

Larry:ナッシュビルに住んでもう8年になります。ライフスタイルが大きく変わりました。実際に僕の住んでいるところはナッシュビルから南へ40 mile(64km)の田舎で、ナッシュビルの町では無いんです。大変静かな所で、たくさんの木々、緑に囲まれて暮らしています。ワイフのミッシェルはアラビアンホースを育てています。うちの家には5頭の馬と4匹の犬と2匹の猫がいます。(笑)

PCI:なんかゆったりとしたきれいな情景が浮かんできます。てっきりナッシュビルの町に近いところと思っていましたので意外でした。

Larry:ここは大変静かで平和な場所で、本当に素晴らしいライフスタイルをエンジョイしています。

PCI:そちらでの音楽活動はロサンゼルスと比較して如何ですか?

Larry:ナッシュビル地区でもロサンゼルスと同様に多くの音楽活動が行われています。僕はナッシュビルでは慈善コンサートに年に数回参加しています。もう知っているかもしれませんが、20年ほど前にもうセッションギタリストとしての仕事は止めています。だからナッシュビルの音楽シーンに参加するためにここにいるというのではなく、心地よいホームと静けさを得るためにここで暮らしているという訳です。

PCI:なるほど、音楽活動の場としてナッシュビルに住まれている訳では無かったんですね。ナッシュビルは四季もはっきりしていて、きれいな町ですよね。ロサンゼルスではあまり四季がはっきりしていませんから。

Larry:そう、季節の移り変わりもここでエンジョイしています。

PCI:それでは機材について聞かせて下さい。まずアンプについて聞きたいのですが、ダンブルアンプとフェンダーアンプの使い分けは、ダンブルがライブ、フェンダーがレコーディングということでしょうか?

Larry:一概にそうではなく、ケースバイケースです。ダンブルアンプをメインで使っていますが、ライブやレコーディングで少し違うトーンが欲しい時や大きな音を出せない時にオールド・ビンテージ・フェンダー・アンプを時々使います。

at Catalina Bar & Grill in Los Angeles (4/22/2003)

PCI:それらのフェンダーアンプは、ダンブルの改造が施されているのでしょうか?それともオリジナル・コンディションなのでしょうか?

Larry:オリジナル・コンディションです。ダンブルが改造したフェンダーアンプは持っていません。

PCI :ブギーのMK-1を ポール・リベラが壊してしまったエピソードを本人から聞きましたが、結局修復したブギーはその後使用しなくなりますね? やはり音が違ってしまったのでしょうか?

Larry:1974年に買ったオリジナルのブギー・アンプは大変気に入っていました。何年も使っていました。そう、ポールの話したエピソードの通り彼が落として壊してしまいましたね。(笑) 確かに完全修復してくれましたが、やはりオリジナルと少し音が違っていました。それからブギーの次のバージョンのアンプも試しましたがあまり好きになれませんでした。

PCI:その後ダンブル・アンプと出会い魅せられた訳ですね?

Larry:そうです。

PCI:スティーリー・ダンのRoyal Scamでのソロは非常に有名ですが、ご自身が最も気に入っているプレイはどの曲ですか?

Larry: Kid Charlemagneのソロが一番有名ですよね? 僕のギターサウンドがよくマッチしたと思います。あの様な洗練されたコードをポップなセッティングで演れたんで音楽的に素晴らしいものになったと思います。そういう意味で気に入っている曲ですね。

PCI:ディーン・パークスとの出会いについて教えてください。ディーンにインタビューした際、あなたとのスティーリー・ダンでのグッド・コンビネーションについて語ってくれました。(ディーン・パークスのインタビューはこちら。)

Larry:ディーンが最初LAに来たとき、既に僕はLAでは確固たるセッションギタリストとしての立場を築いていました。彼は、Sonny and Cherと一緒にLAに来ました。彼らがTVショーをやる時にディーンも一緒にLAに来たんですね。TVショーの責任者にこのショーで僕もギターを弾く様に雇われたんです。「Sonny and Cherにも専属のギタリストがいる様だが君も来てくれ。」って。その時のTVショーで初めてディーンと会ったんです。最初のレコーディング・セッションの後、ディーンが如何にすごいギタリストかは誰の目にも一目瞭然でした。それでショーの責任者に言ったんです。「このバンドには僕は必要無いよ。僕よりはるかにこのディーン・パークスは凄いよ。彼はまだLAでは知られていないけどLAの誰に推薦しても間違い無いすごいギタリストだよ!」って。

PCI:最初のディーンとの出会いは衝撃的だったんですね。スティーリー・ダンでは何度も共演されていますが如何でしたか?

Larry:僕の音楽人生の中で、ディーンと仕事をする時はいつも最も心地よかった。ご存知の様にパーフェクトなジェントルマンで、素晴らしいミュージシャンです。いつも楽しみながら彼とは素晴らしいサウンド、音楽を創れたと思っています。

PCI:「ミッシェル・コロンビエー(Michel Colombier)」のアルバムでスティーブ・ガット、ジャコ・パストリアスと共演していますが、Room 335はこのアルバムの為に用意した曲と聞いています。

Larry:その通りです。

PCI:このメンバーで録音したRoom 335のテイクはあるのでしょうか?

Larry:残念ながらありません。このアルバムはミッシェル・コロンビエーと僕のデュエットアルバムとして、当初は"United Artist Record"からリリースするという予定でレコーディングが始まったんです。ところが、レコーディングを続けている過程で"Warner Brothers"から僕にアプローチがあり、僕と世界市場での独占契約を結んでしまいました。それでミッシェル・コロンビエーとのレコーディングは継続しましたが、デュエットでのアルバムという構想は取り止めにして単なるゲストミュージシャンということになったんです。当初は自分の曲を多くこのアルバムに用意していたんですけど。

PCI:そういう事情があったんですか。さて新作のSapphire Blue(6月末発売)というアルバムはブルースが基調になったそうですね。文字通りSapphire Blues Bandという名でメンバーは以下の方々で6月末より日本ツアーへ行かれるそうですね?
Rick Jackson(Key)、Micheal Rhodes(b) 、Gregg Bissonette(ds)
Mike Haynes(tp) 、Barry Green(tb)、Doug Moffet(Sax) 、Mark Douthit(Sax)

Larry:そうです。ここしばらくやりたかった音楽の集大成です

PCI:レコーディングメンバーも同じですか?

Larry:ベースのMicheal RhodesとサックスのMark Douthitは同じです。

PCI:マイケル・ローズとは以前から親しくさせて頂いていまして素晴らしいベース・プレイヤーと思っていますが、今回彼を起用された理由は?

Larry:マイケル・ローズとはもう10年以上の付き合いです。彼のベーシストとしての技量はもちろん彼の音楽に対する情熱もよく知っています。彼はグルーヴ・ミュージックが好きなんです。去年の大晦日のパーティーで彼と一緒だったんですが、その時に今度のブルースアルバムで一緒に演ってくれないかと頼んだんです。このブルース・プロジェクトにはパーフェクトなベーシストです。彼も私も音楽生活長く、お互い同じ様な音楽を好み聴いて成長してきました。気心もピッタリです。

PCI:LAのCatalina Bar & Grillでお会いした時はエイブラハム・ラボリエル がベースで、素晴らしい演奏でしたね。彼もあなたとは長い付き合いで、我々もインタビューをさせて頂きました。(エイブラハム・ラボリエルのインタビューはこちら)あなたから見て、この2人のベーシストの違いは?

Larry Carlton & Abraham Laboriel
at Catalina Bar & Grill in Los Angeles (4/22/2003)

Larry:2人には多くの共通点ともちろん違いがあります。2人とも音楽とグルーヴへの情熱は並外れたものがあり真剣です。そういう意味ではよく似ています。でも外見とスタイルは随分違いますよね。(笑) エイブラハムはジャズにより情熱を持っている様ですね。これは彼が若い頃ジャズを中心に多く勉強してきたからだと思います。マイケルはジャズよりグルーヴミュージックにより情熱を持っている様に思います。彼の場合はジャズよりグルーヴミュージックを中心に勉強したからでしょう。マイケルもジャズを理解してプレイしますが、よりグルーヴミュージックに情熱を感じるということです。2人それぞれとGIGを演ると、個性の違いにより異なる音楽になります。どちらも素晴らしいですよ。

PCI:今回のアルバム、"Sapphire Blue" で使用したギター、アンプ、エフェクトペダルは何でしょうか?

Larry:8曲はES-335で、1曲はどの曲か忘れましたが、51年テレキャスターでした。そしてもう1曲は57年のレスポールでした。アンプはダンブル・アンプがメインです。そしてツイード、バイブロラックスも使いました。

PCI:エフェクターは何か使いましたか?

Larry:いいえ、全く使いませんでした。

PCI:ギターケーブルは何を使ってみえますか? 

Larry:何を使っているか気にもとめたことありません。そんな高いものではなく普通のどこにでもあるケーブルを使っていますよ。

PCI:どのギターケーブルの方が音がいいなどとは考えたこともありませんか?

Larry:全く考えたことありません。(笑)

PCI:有り難うございます。重要な情報です。(笑) さて、今後Four Play(フォー・プレイ)での活動予定は?

Larry:来年1月にスタジオ入りして次のアルバム製作に取りかかる予定です。おそらくツアーに出るのはアルバムが完成してからですから来年の8月頃になりそうです。

PCI:日本でも多くのファンが楽しみにしています。さて、スティーブ・ルカサーとのライブでグラミー賞を取られましたね。ルークにもインタビューをし、あなたのことを多く語って頂き大変楽しいインタビューとなりました。(スティーブ・ルカサーのインタビューはこちら)ルークと一緒に演ることになったきっかけは? 

Larry:あの時は日本のファンの皆さんの為に、何か特別な楽しい企画を考えたいと思っていました。日本のブルーノートの友人と、3−4年も前からどういう企画が喜ばれるか何度も話し合いました。ユニークでいつもとは違う特別なものでそして日本のファンの皆さんに喜ばれる企画です。色々なミュージシャンのリストを見ながらあれこれ何度も話し合いました。結局スティーブ・ルカサーについて話し合った時、最も音楽的に僕にとっても楽しく、日本のファンの皆さんにも喜ばれるということになったんです。そして僕もルークもお互いを好きですし、音楽へのアプローチと今までの経歴が全く異なっているし、ファンもルークも僕も楽しめると確信したんです。

PCI:本当ですね。素晴らしい企画でした。ルークとは古くからの付き合いなんですか?

Larry:彼がまだ若くTOTOがスタートした頃から知っています。あまり頻繁に会う仲ではありませんでしたが、実際会って仕事をしてみると、お互いいつも気持ち良く仕事ができるんです。ご存知の通り素晴らしいパーソナリティーで一緒にいて楽しいですしね。(笑)

PCI:本当にルークはナイスガイです。ではまた機材について読者からの質問来ていますのでお願いします。長い間335のテールピースを「TP-6」に付け替えてプレイされてましたが、最近またオリジナルのテールピースの335をプレイされてるようです。何故やめられたんでしょう?

Larry:もう「TP-6」はもう手に入らないんじゃないんですか? 数年間作っていただけと思います。最初のプロトタイプを持っていました。今は「TP-6」が開発された頃に比べて、ギターの弦もギター自体も良くなったので特別「TP-6」が必要とは思いません。

PCI:ギブソンから335のカールトン・シグネイチャー・モデルが出ると噂されて久しいですが、どうなったんでしょうか? それに「TP-6」が装備されるのですか?

Larry:進んでいます。最終契約段階にまで来ています。実際、昨日の朝ギブソン・カスタムショップのマイク・マクガイアに僕の335を渡しました。それを元に全てのスペックを取り、新たにプロトタイプを作る手はずになっています。生産するまでにはそう時間はかからないと思います。Mr.335の誕生です。「TP-6」は使用されません。

PCI:楽しみにしているファンも多いと思います。Buzzy Feitenのサイトで「Buzzy Feiten Tuning System」を絶賛されてたようなんですが、手持ちのヴィンテージ・ギター等にも取り入れていますか?

Larry:どのギターかを正確には覚えていませんが、確かバジーが僕のアコギや51年テレキャスターにアレンジしてくれたはずです。

PCI:アコギは今だにValley Artsを使われてるようですがなぜですか?

Larry:これは僕とマイク・マクガイアでデザインした記念のアコギで、20年以上使っています。これ以外をなかなか使う気になれません。そうそう、90%の確立でギブソンがラリー・カールトン・アコースティック・ギターを作るはずです。僕のValley Artsのアコギとそっくりの素晴らしいものになるはずですよ。

PCI:レコーディングでも、内臓してあるB-Bandのピックアップを通してるのでしょうか? 読者によると、CDでは如何にも生っぽいイイ音が聴けますから、プラグはささずに生音をマイクで拾ってるのでしょうかとのことです。

Larry:ケースバイケースです。どのアルバムを聴かれたかによりますね。
B-Bandを使い始めてまだ2年ですから。Four PlayのアルバムではB-Bandピックアップを通したり、生音をマイクで拾ったり両方使いました。

PCI:Four Playと言えば、来日した際にChet Atkinsのナイロン弦を使ってみえたとのことで、あなたがソレを弾いてる姿は始めて見たと読者よりの情報です。レコーディングでは使って無いと思いますが、何故ライブでChet Atkinsを用いたのでしょうかと言う質問です。

Larry:前のFour Playのアルバムでは2曲でガット・ストリング・ギターを使いました。そこでライブではエレクトリック・ガット・ストリングがステージで必要になったんです。Chet Atkinsのナイロン弦がいいと聞いてましたのでギブソンに連絡して届けてもらったんです。アルバムでガット・ストリング・ギターを使った曲をライブで演るためだけに必要になったんです。

PCI:予定より長く丁寧にインタビューに答えて頂き有り難うございました。最後に、日本のファンに何か一言ありましたらお願いします。

Larry:日本のファンの皆さんが新アルバム "Sapphire Blue" を気に入ってくれることを期待します。この5−6年を振り返って、最も自分が好きな音楽の集大成なんです。皆さんが楽しんで頂ければ嬉しいです。

at Catalina Bar & Grill in Los Angeles (4/22/2003)

PCI:日本のツアーの成功をお祈りしています。