East Village Guitars


京都府京都市

東村店長「がんさん」

多くのプロミュージシャンが、「がんさん」という愛称で呼ぶ店長のいる京都の楽器店。ずっと前から気になっていた。会ってお話を聞いて、なぜこれだけ多くのミュージシャンに頼りにされるのか、納得である。(2009年3月6日)

PCI:この新しいお店をオープンされたのはいつでしたか?:

東村:今年の1月10日です。前の店は近鉄伏見駅の近くで、この店から車で15分くらいの所でした。

PCI:前のお店には何年くらいおられたんでしょうか?

東村:約10年ですね。

PCI:お店を開く前は何をされていたんですか?

東村:滋賀県のリッツ楽器さんで店長を3年間やらせていただいてました。そのもっと前は、ワタナベ楽器店さんで働いていました。22歳で就職したのがワタナベ楽器店さんでした。

PCI:それからずっと楽器業界におられたんですね。

東村:いや、違うんです。27歳で一旦楽器業界を離れたんです。結婚して子供ができまして、諸事情で楽器業界は好きやったんですが離れざるを得なくなって、10年間は全然違う福祉関係の仕事をしていたんです。

PCI:そうだったんですか。

東村:ところが介護の仕事で腰を痛めて、椎間板ヘルニアってやつで、仕事が続けられなくなったんです。それで縁があってリッツ楽器さんにお世話になることになりました。

PCI:それで今度は自分のお店を出して独立されるわけですが、どんなきっかけだったんですか?

東村:楽器業界に戻った時は、まさか自分で店をしようとかは思ってもいませんでした。実際戻ってみてわかったことは、昔ながらの楽器屋さんが無くなっているということでした。それと性格上、あかんもんはあかんと言ってしまうので、店長やってるんやけど、お客さんに売らないかんものでも、あかんものは売れないんです。まとめると、「楽器業界で昔ながらの変なおっさんがやっている楽器屋が無いってこと」と、「自分がやっぱり好きなものを売っていきたいと強く思ったこと」が店をやるきっかけです。それからちょうどその頃、トモ藤田さんに再会したんです。彼といろいろしゃべるようになってから、彼の生き様なんかを聞いていると人生で何かもう一回動かなあかんときがある、と思ったんです。今までは考えすぎて止めてしまっていたことを、前向きに動いてみなくてはあかん、と彼と話してすごく影響されたんです。

PCI:トモさんにはPCIサイトに連載コラム「ボストンギター道場」を書いていただいています。その頃トモさんはすでにバークリー音楽大学で教えていらしたんですよね?

東村:そうですね。もう助教授だったと思います。たまたま偶然彼が京都に帰ってきた時に友達づたいで会うことができたんです。

PCI:それでご自分の店を出されて10年になるわけですね。その間にはいろいろなことがあったと思いますが、大変だったことや面白いエピソードあれば教えてください。

東村:まず大変やったことですね。ずっと大変です(笑)毎月ちゃんと生活せなあかんから、いまだにそのスタンスは変わらずで大変です。ただ大変やけど、やりがいっていう意味では、その分充実感はあります。いままで福祉関係の仕事やリッツ楽器さんで働いていた頃と比べると、大変な部分といい部分と共存してる感じです。

PCI:お店を出される時に、自分の売りたいものをお客さんに薦めたいというお話がありましたが、もう少し具体的に品揃えなどで他の楽器屋さんとどう違うのか教えていただけますか?

東村:基本的に若い時は中古ってのが好きやったので、新品の取り扱いも考えたんですけど、新品を扱っている大手の楽器屋さんは京都にもたくさんあるので、そういうとことバッティングさせても難しいと思いました。良いもんていうのは自分自身で探してこようと思いました。それがイコール中古、ヴィンテージということになりました。まだ当時10年前はヴィンテージが買える値段でしたからそれを中心に始めたんです。エフェクターもほとんどヴィンテージ、中古から始めました。安くて良い物を揃えて、学生さんにも手が届くような品揃えを心がけました。それからメンテナンスっていうのが自分では大したことはできないですけど、すごい好きで若い頃から趣味みたいにやっていたんで、お売りしたのもを確実にケアしていくっていうのを重視してやってきました。

PCI:その後ヴィンテージ市場は大きく変化したと思いますが、どのように乗り越えられてきましたか?

東村:そうですね。正直言って今はメンテナンスが中心になっています。楽器がぽんぽん売れたらいいんですけど、ヴィンテージが高額になってしまったんで。中古はまだぼちぼち売れますが、ものはあまり動かなくなりました。それ以上にリペアやメンテナンスの要望が大変増えてきてそちらで忙しくさせていただいています。

PCI:新品の楽器やペダルも置いてらっしゃいますね。

東村:そうですね。初め中古でしたけど、やっぱりお客様のニーズもあるし最近の楽器でええもんたくさんありますから。特にXoticさんのペダルなんかは僕も実際聴いてすごく良いと思いましたんで、そういういいものは少しずつ置くようにしています。Xoticの製品はプロの方の評価も高いですからね。

PCI:プロの方といえば、トモ藤田さんについては先ほどお話にありましたが、亡くなられた塩次伸二さん、アメリカで活躍されていたトシ引田さんなど他の多くのプロの方々とも交流が深い様ですね?

僕も正直自分の店を始めた時に、そのようなプロの方々と知り合うことができるとは思ってもみないことでした。トモさんのギターテックをさせていただいた時に、トモさんから伸ちゃん(塩次さん)をご紹介いただきました。是方さんもそうでした。トモさんのライブ時にご一緒されたギタリストの方々なんですね。それからだんだん色んなミュージシャンの方々との交流がひろがるようになりました。 トシさんとは、4年程前に楽器業界の方にご紹介いただき、お会いしたら素晴らしい音楽&楽器バカ好青年な方やって、その後楽器のメンテやリペアをさせていただくようになり、今では娘の恋愛カウンセラーまでやっていただいてます。(笑)

PCI:ご自身もバンド活動されてるんですよね?

東村:そうですね。学生時代からずっとやってます。

PCI:どんな音楽をやってらっしゃるんですか?

東村:グレイトフル・デッドっていうバンドがあるんですがそのカバーとか、あとは好きなんでブルース系の音楽をやっています。

PCI:今はどんなペースでライブ活動はされてるんですか?

東村:月に1回か2月に一回くらいですかね。

PCI:場所はこの辺ですか?

東村:はい、京都のライブハウスで磔磔(takutaku)、RAG、都雅都雅(togatoga)とかですね。僕みたいな下手くそでも音楽の楽しさや面白さ!や、おっさんバンドの楽しみ方は少しは伝えられるかな?と思いライブをやらせてもらってます。(笑)

PCI:ミュージシャンの方々のリペアの仕事も大変多いようですね。今日もお邪魔したときに、何人かミュージシャンの方のギターをご本人と話をしながらチェックされていましたが、本当に親切で決め細やかな対応をされているんだなと感心しました。短時間にお客さんの持ってきたギターを診断され、丁寧にわかりやすく説明されていました。こういうお店なら自分の楽器を持ってきても安心だなと傍から見ていて思いました。特にリペアの仕事で気をつけられている点は何ですか?

東村:やっぱりプレイヤーの方によって求めてはることが全然違うんですよね。それを聞き出すっていうのが一番大事なことだと思っています。プロアマは関係ないですね。どんな風な音を出しているのかとか、どんな音の方向性を目指しているのかとか、それが重要です。それがわからんとどうリペアして良いかもわかりませんので。

PCI:お一人で全てやっておられるので大変だと思いますが、リペアのリードタイムはどれくらいなんでしょう?

東村:できるだけ早くするようにしています。その場でお渡しできるようなものは30分とか1時間待ってもらってでもやるようにしています。

PCI:最近はどういうリペアの依頼が多いんでしょうか?

東村:基本的にうちで多いのは、トータルメンテ、ネック調整、弦高、ピックアップ調整、組み込みですかね。あとはナット交換、フレットファイリングもすごく多いです。やっぱり消耗品ですからね。あとは電装関係ですね。

PCI:それらを全て一人でやっておられるわけですね。

東村:そうなんです。

PCI:手に負えない時は外注さんを使うこともあるんですか?

東村:もちろんあります。僕自身はギターを木材から作り上げる技術や道具等有りませんので、塗装とか木工関係のルーティングとかそういうことは外注さんにお願いしています。でも、この店で大きな道具が無くても可能と思われる事は手作業でやらせてもらってます。 僕自身のこの店のコンセプトでもあるんですが、素晴らしい楽器を作られるビルダーやメーカーが有り、その楽器を使用するミュージシャンの方々が居られ、その楽器を可能な限りその方に合ったメンテナンスをさせていただき、楽器のコンディションをより良い物にさせていただくのが当店の仕事や!と思ってますねん。

PCI:先ほどお見かけしましたが、ペダルの修理もやっておられるようでしたが?

東村:それはもうわかる範囲だけです。内部の配線とかプロでしかわからない部分もあるんで。

PCI:一般のお客さんはどういう年齢層が多いんでしょうか?

東村:学生さんも多いんですけど、若い人からおっちゃん連中までかなり幅広いです。今は修理の仕事がメインになったので、20前後から30くらいの方が多くなりましたかね。一番今バンドをやっている層ですね。それからちょっと飛んで、元気なおっちゃん連中でバンドをやっている方も結構いますね。

PCI:団塊の世代の人たちが定年退職してまた好きな音楽をやるっていう話をよく聞きますが、そんな動きはありますか?

東村:ありますね。うちの店に限ったことかもしれませんが、楽器はそんなに売れませんが、そういう世代の人たちが昔持ってた楽器をメンテに持って来られるるというのは結構あります。ずっと仕事でできんかって、やっと時間ができて、昔の楽器を引っ張り出してみたら、フレット錆びてるわ、音鳴らへんわ、でそんなのを持ってきて使えるようにして欲しいっていう人は結構います。あとは大手の楽器屋さんで新品の楽器を、昔憧れだったやつを今お金がちょっとできたんで買って、それをちょっとメンテして欲しいと持って来るお客さんもちょくちょくいます。どっちかですわ。新しい良いもん買われるか、昔持ってたものを直して使うか。

PCI:それから悲しい話ですが、昨年10月に塩次伸二さんが突然亡くなられて私もびっくりしましたが、塩次さんとのお付き合いについて教えてください。

東村:伸ちゃんとはトモさんのツアーがきっかけなんですが、僕も高校生のときからの憧れの「塩次伸二」さんですから、初対面時はもう直立不動ですわ。でも、初対面やのにものすごく気さくにしゃべっていただきまして。最初は挨拶だけだったんですが、それからしばらくして店に来ていただけるようになって、楽器のメンテとかエフェクトボードを作らせてもらったりとかいろいろ仕事をさせてもらいました。ほんとに親しくギターテックのような仕事をさせていただけるようになったのは3年前くらいからですかね。

PCI:それからは頻繁にお店にもお見えになるようになったんですね。

東村:そうですね。ちょうど亡くなられる1週間前もお店に来られたんですよ。ちょっとメンテの仕事もやらせていただいて。その1週間後でしたからショックでした。

PCI:特に塩次さんのギターをメンテされて、他のMusicianと違う点とかエピソードがありましたら教えてください。

東村:伸ちゃんは、楽器の守備範囲がすごく広い天才肌の方なんやと思います。リフレットの時でも、「もうがんさんにまかす!」、って言われるんです。普通他のプロの方っていうのは、結構弦高とかナットの削りとか細かい要望があるんですけど、伸ちゃんは、「まかす!」。それで終わりなんです。(笑)

PCI:「弘法筆を選ばず」ですね (笑)

東村:そう、もうどんな状態のギターでもいつもの極上なトーンとフレージングで演奏されるんです。本当はいろいろ言うていただいた方が仕事はしやすいんですが、こちらで伸ちゃんの好みを勉強させていただきました。でも、ものすごいプレッシャーでした。

PCI:どんなギターを持っても、あの人の音になっちゃうんですよね。

東村:そうそう。テレでもレスポールでも335でもみんな伸ちゃんの音になるんです。アンプもトランジスターであろうがチューブであろうがいつもの伸ちゃんの音になっちゃうんです。あれは不思議でした。

PCI:ロサンゼルスでレコーディングをされたときに、ちょっとお手伝いをさせていただいたんですが、ライブハウスでアレン・ハインズと飛び入りでセッションすることなったことがあったんです。

東村:あ、その映像はPCIのサイトで見ました。

PCI:そのときもその場にあった、アンプとギターで弾かれたんですが、ぶっつけ本番でしっかり塩次さんの音で、アレン・ハインズも耳の肥えたLAの観客も大喜びの素晴らしい演奏でした。

東村:京都は伸ちゃんがずっと活動の拠点にしておられましたから、塩次伸二VS. 誰々というギタリスト同士のライブは、ギターテックで付かせていただいたり個人的にお客さんとしても沢山見せていただきました。そのライブで共演されたギタリストの方々は、伸ちゃんのギターから飛び出す音やフレーズに圧倒され、ライブ後口を揃えて伸ちゃんの事を絶賛されてました。ほんまにもう素晴らしい方でした。店に来られる若い人たちに、もっともっと聞いて欲しかったんです。楽器店をやってますから、楽器を売らなあかんのですが、ギター、アンプ、エフェクターがどうやこうやの前に、まずええ音というのは左手と右手で出せるようにならなあかん!のですわ。そして、それを生で体験させていただける数少ないギタリストが伸ちゃんやったんです。若い方たちに伸ちゃんのライブ(生)を見せるのがほんとに楽しみでした。伸ちゃんの真の凄さは生!なんですよね。それが聞けなくなったのはほんとに残念です。

PCI:Xoticのペダルも扱っていただいているようですが、どんな印象をお持ちでしょうか?

東村:すごい使いやすいと思います。アンプがチューブだろうがトランジスタがだろうが、そこでの調整がすごくしやすかったです。それが最初の印象でした。

PCI:特にどのペダルが評判いいですか?

東村:RC Booterが一番良く動いてるんやないでしょうか。プロの方が買っていかれることが多いですね。良いアンプを持っておられる方がBoosterとして使われるようです。あと最近はBB Preampも評判いいですね。ひずみの一つの音として良い物を持っているので、トランジスタのアンプしかない人がBBと組み合わせてよいひずみを作るのに使うようです。AC Boosterもよく売れたんですけど、ギターの種類によって相性と好みもあるようですね。

PCI:Raw Vintageのサドルとスプリングもトモさんからは高い評価を頂いておりますが、お試しになられましたでしょうか?

東村:スプリングはまだなんです。近いうちにぜひ試したいと思っています。サドルは大変好きです。かなりマニアックですが、弦が直接当たる部分なので結構音も変わりよいですね。

PCI:Arkayの弦なんかは、山岸さんには評価が高かったですがいかがでしょう?

東村:僕もアーケイの弦は店でお奨めしてます。音がちょっと穏やかな感じもあって、新しい弦に変えた時の特有のいやらしさも無くて、それで長持ちするんです。うちも置きだしてから一度使ったお客さんが意外にはまって、それから病み付きになるというケースが増えています。当店に来られてるプロの方々も絶賛されてますな。

PCI:最後にうちのサイトの読者に何かメッセージがありましたらお願いします。

東村:自分がこうして店をやっていて思うんですが、昔に比べたら音楽&楽器バカ人間が少なくなって来ています。皆さんにはどんどん深みにハマッていただだきたいです。そして、そういう方をたくさん集めてその輪を広げていきたいです。これはプロの方アマチュアの方問わずに、楽器店や楽器メーカーやミュージシャンの方々等を巻き込んでどんどん輪を広げていきたいですね。もちろん楽器を売らなあかんのですが、やっぱり何よりもまず音楽&楽器好きな方が増えてくれて、それで楽器が自然と売れるようにならなあかんと思います。

PCI:楽器を使う喜びや良さがもっと多くの人にわかってもらい、楽器業界全体のパイが大きくなると良いですね。

東村:そうですね。いくらメーカーさんが良い楽器を作っていただいたとしても、それを求める方が最近すごく少なくなってきているように思うんです。良いものを聞く耳とか良いものを知ろうとする気持ちとか、そういうのを大事にして、音楽&楽器好きの人の輪を広げていきたいと思っているんです。それは草の根運動ですけども。

PCI:昔はギターケースを担いでいると格好いいという時代もあったんですけど、今はそうでもないようですね。

東村:そうそう。今はギター持ってると、ださって言われたりしてね(笑) 僕が二十歳前後の時に京都駅で70年代のストラトを担いだロン毛のにいちゃんも見て、「かっこえーわ!」と思ったこともあったんですけど、今そんな方を見たら、周囲の方々は「あの人ちょっと危ないんちゃう?」って思われますな(笑)

PCI:でもまだ京都はまだ良い方だと思います。

東村:そうですね。個性的なバンドもたくさん有りますし、有名無名に関係なく素晴らしいミュージシャンの方もたくさん居られます。その分環境は良いかもしれませんね。若い方々にはどんどんライブハウスに行ってもらって、もっともっと「生」の音楽を好きになってほしいです。最近は京都のライブハウス事情も大変寒いようで、観客動員が厳しいようです。どうすればもっと足を運んでいただけるか? そのためにはまずは音楽を好きにならんことには始まりませんね。僕らも若い頃は音楽が好きだから楽器をやってみよう!と思ったわけで。

PCI:ほんとに同感です。これからも一緒にそういう活動をしていきたいと思います。頑張りましょう。今日はお忙しいところありがとうございました。

          
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