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2008年3月20日

第8回 オリジナリティーについて

独創性、というとカタイですけど。 でもミュージシャンの中には、やっぱりオリジナルをやるアーティストとしての成功が最高峰、という認識はやっぱりあると思います。

どうせやるなら夢は大きくみなくちゃ! と思っても、でもオリジナルってどうやって書くの? と思うかも知れません。

しかもいいオリジナルを書くのは簡単ではないですし。

というわけでここでちょっと独創性ということについて考えてみましょう。

僕の中では独創性とはこう定義できます。

「自分という人間を素直に反映した音楽を創ること」

あれ?と思われるかも知れません。 独創性とは唯一無二のことでしょう?

その通り。 そして、自分という人間は実は唯一無二の存在なわけですから、それを素直に反映した音楽を創れば、結果としてできた音楽も他の人にできないものになるわけです。

考えてみましょう。 自分にはそんな強烈な個性なんかないと思っても、でも実はこの広い世界にはあなたと全く同じ音楽を聴いている人はいないんです。 好きなアーティストが共通してたり、似てたりしても、でも好きな曲はどれ、という話になるとそこまで全く同じというケースはありません。

あなたの音楽の好みとは、あなただけが持っているもの。

なので、まずそこから始めましょう。

まず最初は物まねです。 好きなアーティスト、好きな曲を分析したり、リフを盗んでそれをベースに他の曲を作ってみたりしたらいいんです。 コード進行、メロディー、何でもいいです。 コピーして、それをちょっと変えて別の曲にするという作業から始めればいいです。 それは世間に発表する類いの楽曲ではないかもしれませんけど、でも練習、特に独創性の基盤としてはもってこいです。

でもその作業の中で、「変えてる」部分に注意を払いましょう。 他から借りてきた題材でも、いじくり回していくうちに元が何だかわからなくなってしまうかもしれません。 そうしたらしめたものです。

ギターのトーンやフレーズなどもそう。 耳コピ、日本人は熱心にしますよね。 ただ集中している部分が独創性を養うという観点から見るとちょっと間違ってる。 細部まで完全にオリジナル、原本を再現することに圧倒的にエネルギーがいってるからです。 昔読んでいた日本の某ギター雑誌なんかもコピーのコンテストをして、誰それのヴィブラートまで細かくオリジナルに近い点が評価されたりしてたんですが、あれでは物まねマシーンを養成しているだけです。 細かいところはごまかして、というか自分で弾けるフレーズで代用してしまえばいいんです。 そういうことをやってるうちに、自分の持ち技、というか持っているスタイルというものが他とは違って独特なものになってきますから。

他の人の題材を応用することがうまくできるようになったら、次はそれをもっと発展させて、上記のようにもじったところにより注意を払うようにしたらいいです。 物まねのように聞こえるときは、原点がわからなくなるまでいじくり回す。 またあるアーティストのリフを採用したら、次に全く別物の題材をくっつけて曲全体としての原点が見えにくくする、などしたらいいんです。

そうしているうちに、次第に影響が混ざってきて、でてくる音楽がどこから来たんだかわからないようになります。

これこそオリジナリティー。

一昼夜でできることではなくて、長い時期をかけてじっくり煮詰めてこそ出て来る味なんですね。

僕もファーストと(次につくる)セカンドアルバムはここ10年くらい書きためてきた曲が中心なので、古い曲の中には影響丸見えの部分もあります。 この曲のこの部分はあのアーティストからパクり、こっちのリフはこのバンドから頂いた、と自分で分析することもできてしまいます。(でも種明かしはしませんよ) でもそうやってかき集めた部分の集大成が僕の音楽というスタイルを確立しているわけです。 一曲単位でみたら影響ははっきりとわかるかもしれませんが、全体像としては独特のものがあるわけです。

現にファンの方からそういうコメントも頂いてますから、他の人が聴いてもそう認識できるところまで来ているわけですね。。

しかも最近書いている曲はもっと影響の出どころのわかりにくい、自分としての声がはっきり出ているものが多く、手応えを感じています。

オリジナリティーとは、無理して他人と違うことをやってやろうとすることではありません。 そういう意図で創ると、たとえ奇抜なものを創ったとしても底が浅く、長続きしなかったり聴いていると飽きてしまうことが多くなります。

違うものを創るんではなくて、自分を反映したものを創る。 やってるうちに自分と他の違うところを発見していって、その点を強調させる。

でもあまり難しく考えることはないんです。 要するに自分で聴いていいと思える音楽を創ればいいんですね。

後はひたすら曲を書き続けることです。 曲作りというのは基本的には多くやればやるほどうまくなります。 アイデアが枯れてしまうとかいうことは決してありません。

一生かけて取り組むつもりで気長にやりましょう。 やりがいがありますよ。


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投稿者 ari : 07:08

2008年3月 7日

第7回 レストランの例え

先日ミュージシャンの友達とミュージックビジネスの話をしていた時です。 相変わらず皆が音楽業界の衰退を憂いているという話。 彼がこんなことを言いました。

「ミュージシャンは昔から自力でビジネスとして成功した経験がないんだよ。 だから企業が傾いている今、いざ自分で何かやろうとしてもどうしていいんだかわからないんだ。」

その時は気にとまっただけだったんですが、考えているうちに彼の言っていることはどうも的を得ているぞ、という気がしてきました。

みんな誰も自分が「ミュージシャンになる」というと「そんな無理なことを」と言われた経験があると思います。 

でもこの観念についてちょっと考えてみましょう。

例えば料理がとてもうまい知人がいるとしましょう。 料理が大好きで、いつも誰に頼まれなくても料理ばかりしている人。 この人が「将来レストランを開ける」といった場合、「そんな無理なことを」と考えますか?

レストランを起業し、運営するのにはまず第一においしい料理を作れるという大前提があると思います。

でもそれだけではやっていけないでしょう。 レストランといっても自営業ですから、それなりに営業や財務、宣伝などやらなくてはいけません。 料理がうまくても自営でやっていくビジネスのノウハウがないので、他で雇われて食べていく人も多いでしょう。

でもそういったビジネス関係の面も含めて自分の店を持つということに生きがいを感じ、成功する人も多いと思います。 それは決して不可能なことではありません。

ただ料理するだけでは駄目だ、ということに気付くことが肝心なだけです。

ミュージシャンについても同じことがいえると僕は思ってるんです。 今までは大企業に雇われて、いわゆるサラリーマンのように作品を会社に提供して会社の利益を分けてもらうというやり方がアーティストとしてやっていく唯一の方法のように思われてきました。 

でも肝心の企業は大手は数社しかないし、応募する数も多く、その中から企業のバッキングを得てヒットする人は少数。 かなり運任せですし、宝くじをひくように頼りない夢であるといわざるをえません。

ならば思考を変えて、ミュージシャンもレストランのように自営で、こじんまりとでもいいから音楽企業を運営してみればいいんではないか、というのがここ数年英語圏では浸透している考えなんですね。 完全自営でなくても小さなインディーレーベルとアーティストが共同してビジネスを運営していくという形。 

どっちにしてもミュージシャンに迫られているのはビジネスのノウハウ。 これまでミュージシャンが他力本願でやってきて、あまり前例のない自営という形での活動を展開させようとしているわけですから、成功例よりも失敗例の方が圧倒的に多いのも無理ないと思います。

例えばレストランの運営のための本とか教材はあるでしょうけど、ミュージシャンのためにそういうものがあるか、というと、「こうすれば食べていける」という形がまだはっきりしてないのでないわけです。 いや、そういう情報は英語圏にはごまんとありますけど、でもそれを実践できているミュージシャンはまだまだ少ないし、成功例が少ない分その情報もあてにならないように感じられているわけです。

でも英語圏ではだいぶ形が見えてきたというのが僕の持論です。 まだ僕自身もその途上なのではっきりいえないんですが、将来今のやり方が何か形になったらもちろんそのときは他の人にそのノウハウを伝えたいとは思っています。

勘違いしてほしくはないので念のため書いておきますが、僕はレーベルと契約することとかメジャーでヒットを飛ばすことが悪いやり方だといっているわけでは決してありません。

ただ他にも音楽を創って生きていくやり方はあるんじゃないか、といっているだけです。 料理が好きな人が自分でレストランを開業して食べていけるように。

希望をもってやりましょう。

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投稿者 ari : 08:06