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 Hiro Suzuki インタビュー

 

デボラ・コールマンというリズム&ブルースの黒人女性ギタリストをご存知だろうか? このところアメリカの東海岸で注目されているプレイヤーだ。2年前には日本でもブルースフェスティバルでプレイしているので知っている人もいるのではないだろうか? 今年からデボラのバンドでギタリストとして活躍している鈴木宏昌という日本人がいる。今回、デボラ・コールマンの西海岸ツアーで12月5日、ここLAのCozyユsというクラブに出演するという連絡を受けてインタビューをお願いした。実は、彼の兄とバンドをやっていた関係で彼が中学生の頃から知っている私としては、懐かしいやら、こちらで頑張っているのを見て嬉しいやら、普段にもまして楽しみなインタビューとなった。

(12/5/2003 by Hiro Miura)

PCI) 久しぶり。西海岸へは中々来るチャンスが無いようだったので今回、LAで会えるのをとても楽しみにしてたんだ。

鈴木)こういう形でインタビューを受けるのも不思議ですね。最後に会ったのはクリスティン・サンテリやジェリーダガーのバンドでプレイしてた時だよね?

PCI) そう、6年ぐらい前かな? ベースとギターの売り込みにNYへ行った時。今は無くなってしまった、「世界貿易センタービル」の最上階のクラブで会ったっきりだね。

鈴木)あの時はジェリーダガーのバンドで弾いてた時だね。911は今でも忘れられないショックです。アメリカに来て一番信じられない事だった。

PCI) ところで色々聞きたいことはあるんだけれど、まずこちらへ来る前は日本ではどんな活動をしていたのか? またこちらへ来るきっかけは?

鈴木)ギターで食っていこうと思って20歳ぐらいからいろんなバンドでやったけどどれもうまく行かなくて29歳の時にもうやめよう、来年はどこかへ就職してギターは趣味にしようと思ったんです。で、その前に一度海外へ行ってみようと思いNYへ来たのが始まり。

PCI) じゃあその時は観光?

鈴木)始めは全く遊び。こっち来てギター弾くなんて考えてなかった。ただブルースのクラブは何軒も回って歩いていたんです。ある日入ったクラブはいろんな人が出るんだけど、上手いヤツもいればどーしようもないヤツもいて、「これなら俺だってやれそうじゃん。」って思って弾かせてもらったらこれがご機嫌! 最高に楽しくて。日本じゃブルースやってる人少ないし煮詰まっていたのにNYの場末のクラブでこんなにリラックスして楽しめるなんて思ってもいなかった。それでもう就職なんて無し、学生ビザ取ってNY に引っ越して、昼は学校とバイト。夜はクラブでギターを弾くっていう生活。ただ学生ビザだと働ける時間が週に何時間って決まっててそれだけだと生活が成り立たない。それでグリーンカードを申し込んだら運良く当たって、もうそれからはいくら働いても問題ないし、ギターで仕事をしても構わないって状態になったのでもう殆ど学校は行かず、昼バイトして後はギター担いでクラブ回り。

PCI) そうなんだ。ブルースやるのに何でNY を選んだんだろうって思ってたんだ。その頃はもうギターの仕事はしてたの?

鈴木)全然、ただ毎日クラブでギター弾くだけなんだけどもう楽しくて楽しくて。そうこうしているうちにぽつりぽつりと仕事が入ってくるようになって。まあそれだけでは生活できないけどギタリストとして仕事が出来るのは嬉しかった。それからクリスティン・サンテリのバンドに入ってヨーロッパツアーや南アフリカのツアーにも行ったりしてやっとギターの仕事で生活が出来るようになってきたんです。

PCI) こちらへ来る前の日本での数年間がうそのようなとんとん拍子だね。

鈴木)そうなんだよね。アメリカが合ってるのかな?

PCI) エルビン・ビショップと非常に親しいと聞いたんだけど?

鈴木)とても良くしてもらっています。知り合ったのは数年前にNYのBB King Clubにでた時、俺のバンドがエルビンのオープンニングだったんです。もう大好きなプレイヤーだったんで楽屋へ行ってあいさつしてそれから良く電話で話をするようになって。たまたまコネチカットでブルースフェスティバルがあってそれに出演するから遊びにおいでって誘われて、客席で見てたら盛り上がったエルビンがギター弾きながら客席に乱入してきて、俺にギターを渡して弾けっていうんで突然だったけど開き直って思いっきり弾きました。彼のステージが終わって楽屋へ行くとエルビンにデボラを紹介されて、「彼女のバンドでギターを探しているんでおまえを推薦しといたよ。」って。それが今年の春頃、それからデボラと一緒にやってます。

PCI) デボラがリードギターですが一緒にやってみてどうですか?

鈴木)かなり良いコンビネーションです。デボラが欲しがっている事が良く解るし、「こうしたらやりやすいだろうな。」とか、「こういうバッキングを取るとデボラはこう絡んでくるだろう。」とかとても息が合ってます。デボラはクラプトンやジェフ・ベック、ジミ・ヘンドリックス等が好きなので黒人ブルースギタリストには珍しいあまり泥臭くないギターを弾くんです。それとバンドでのグルーブを大事にしているので非常にやりやすいです。

PCI) 今回のツアーで初めて西海岸に来たって本当?

鈴木)そうなんですよ。アメリカに来て10年になるし、おかげさまで海外のツアーにも連れていってもらってるんだけどなんとこちらに来るのは初めて。一昨日、ラスベガスに飛行機で着いてそこからデボラのバンでツアーを始めたんだけど感動しっぱなし。砂漠を見るの初めてだし、そのまっただ中にネオンぎらぎらのラスベガスでしょう? 不思議だよね〜。 初日はラスベガスでやって、次の夜はアリゾナのツーソンって町なんだけどこれがまた遠かった。

PCI) このツアーにはマネージャーは付いてきてないの?

鈴木)そんなのいないよ! 機材の搬入から移動の車の運転も全て4人のメンバーでやってるんだ。ブッキングはエージェントがやってるんだけど、ベガス〜ツーソン〜ロスと移動距離が長いんでこの3日間がきつかった。夕べツーソンでやって、今朝LAへ向けてツーソンを出たんだけど、これがまた遠い。途中で今夜のライブに間に合わないかと思いました。はじめは砂漠の風景やサボテン見て喜んでたけどお昼にフェニックスを過ぎた辺りで後5〜6時間掛かるって聞いてそれから飛ばした飛ばした。でもほんと温かいよね。さっきニュースでやってたけどNYは雪が50センチも積もったらしいよ。

PCI) 普段はNY近辺でのライブが多いようだけど西海岸は遠いからツアー組むのが難しいの?

鈴木)それもあるけどアメリカのブルースの盛り上がりが無いんです。今、NY のブルースクラブはどんどん閉めちゃってて、最悪なんだ。でもNYだけじゃなくアメリカ全体でも有名なブルースクラブで営業しているところは50件位しかないんだよ。だからツアーを組んで回るのが難しくなってるみたい。SRVが亡くなってからギターヒーローが出てこないんでブルースシーンは落ち込んでるんだよね。

PCI) じゃあクラブ回り以外は? 各地で行われるブルースフェスティバル等への出演は?

鈴木)春から秋にかけては、ほとんどがそういったブルースフェスへの出演で各地を回ってます。ブルースクラブが少なくなっているのでそういったフェスの仕事がメインですね。会場も大きいし、色々なブルースメンと出会えるので楽しい!

PCI) 今後の予定は?

鈴木)この後、サンフランシスコからオレゴンを通ってワシントン、カナダ、ユタ、アイダホ、コロラドまで回ってラスト、クリスマス前にNYに戻って今年は終わり。行ったことが無い所ばかりなので楽しみ。来年は3月にブラジルへ行って、5月にデボラの新しいCD がでるのでそれに合わせたツアーになると思います。

PCI) レコーディングには参加したの?

鈴木)全曲でリズムギターと2〜3曲でスライドギターを弾いてます。このツアーが終わってNYへ帰る前にコロラドのスタジオでまた少し作業することになってます。

PCI) じゃあCDに名前がクレジットされるんだ?

鈴木)そうなんだけど、これも大変だったんだ。レコーディングプロデューサーがデボラ以外はスタジオミュージシャンを使う予定でいたんだけれど、デボラがライブフィーリングを出すのには出来るだけバンドのメンバーを入れたいって意見をプロデューサーが取り上げてくれて、俺も参加することになったんだ。

PCI) そのCD楽しみにしてます。この後のツアーも頑張って。

ライブレポートはこちら。
連載コラム、ヒロ鈴木の「がたがた言うんじゃねえ、心で弾け!」はこちら。

Hiro Suzuki & Deborah Coleman at Cozy's in Los Angeles (Dec 2003)