PCI USA

PCI - Prosound Communications Inc

menu

 

ジョー・バーデンの秘密(その1)

 

1983年に「ダブル・ブレード・ピックアップ」がダニー・ガットンの為に開発されて以来、Joe Barden Pickupsはエレキギターの新しい革新的ピックアップとして多くのプロユーザーから高い評価を得てきました。
「出力を上げ、ノイズを無くし、ビンテージトーンを得る。」
この基本開発ポリシーを基に、多くの試行錯誤の結果、素晴らしいピックアップが誕生したのです。また、ジョー・バーデンはただのピックアップのメーカーに留まらず、エアロスミス、ブルース・スプリングスティーン、U2のサウンドアドバイザーでもありアンプやギターの改造などを通じてアメリカでは多くのプロミュージシャンから絶大な信頼を得ています。2003年1月のNAMMショーでは遂にJoe Barden Guitarsも3機種発表されプロの間で評判となり、早速エアロスミスのJoe Perryなどが使っています。(ジョー・バーデンの説明製品はこちら。)
日本ではまだあまり知られていないジョー・バーデンの素顔、秘密に迫ります。ジョー・バーデンの工房(アメリカのヴァージニア州ヴィエナという町)でのロング・インタビューを3回に分けてお届けします。


「エアロスミス、ジョー・ペリー使用のMarshallアンプは全てジョー・バーデンが改造!」

PCI:Joeのオフィスのあるこのヴィエナは小さな町ですが、高速で30分も走ればワシントンDC, バルチモアにも近く便利ですね。さてエアロスミスのジョー・ペリーはあなたの改造したアンプを使っているそうですが?

Joe:ジョー・ペリーは結局僕が改造したマーシャルアンプを7台買いました。200 wattメジャーをスーパーリードの様なものに変えたという改造です。何台かは6550チューブを使いそれ以外はEL34チューブを使いました。200W スーパーリード1959とでも言いましょうか。サウンドはスーパーリードの様ですが、出力は若干犠牲にしましたので200 wattは出ないかもしれません。ジョー・ペリーはトーンを大変気に入ってくれていつも使ってますよ。

PCI:7台全てをですか?

Joe:4台を常に使い残りの3台はスペアで私が常にメンテしています。ここに2台メンテ用のが置いてあります。めちゃくちゃ重いです。(笑)

PCI:改造したマーシャル・メジャー200Wは何年のものですか?

Joe:1969年3月11日製造のものです。3月11日というのは大変重要な日なんです。ジョー・ペリーのギターテック、Jim Survis(ジム・サービス)の誕生日。だからジムがこのアンプの改造で世界一のベストアンプにしてくれって。(笑) 

PCI:どんなポリシーで改造されたんですか?

Joe:まずはマーシャル・メジャーのオリジナル製品の開発、設計、サウンドの変遷のいきさつについて調査しました。完璧とは行かないまでも色々なネットワークを通じて貴重な情報を多く入手しました。キーポイントは、1968年か1969年にリッチー・ブラックモア、ジミー・ペイジがジム・マーシャルに「アンプの音量が足らない。もっと大きくしたい。」と頼んだそうです。ところがジム・マーシャルは、彼らがディストーションを必要としていることを理解できなかったんです。とにかく音量をでかくし、フルテンにした時ディストーションが失われてもいいと勘違いしたんです。それで大音量の200 Wattアンプはできたんですがマーシャル・サウンドでは無くなってしまったんです。彼らが望んだのは大音量でなおかつディストーションサウンドだったんです。それで、いくつかのジョー・バーデン・トリックで、この200 Wattアンプを素晴らしいディストーションが出せるアンプに改造したんです。音量は若干犠牲になり小さくなりましたが、それでもまだでかいですよ。ただオリジナルの200 Wattに比較すると少々小さいという意味です。

PCI:そしてジョー・ペリーが改造後のサウンドを大変気に入ったということですね?

Joe:絶賛です。ジョー・ペリーは私の改造した4台のアンプとギブソンのゴールド・トーンを組み合わせていつも使っています。ブラッド・ウィットフォードは頻繁にアンプを替えていた様ですが最近はマーシャルのスーパーリードを使っていますね。この間ペンシルベニアで彼のアンプも修理しました。

PCI:ジョー・ペリーはJoe Barden Pickupsを使っていますし、この度Joe Barden Guitarsも使ってもらえるとなるとエアロスミスのギターサウンドの重要なところはあなたが噛んでいるということになりますね。

Joe:そうですね。ただ結論を下すのはギターテックのジム・サービスなんです。彼とも長い付き合いで信頼してもらっています。ただ、このアンプの改造とサウンドをキープするにはチューブやパーツなどの確保に苦労します。パーツ屋や楽器店だけでなく個人のパーツコレクターや特別なルートで常に情報を入手する様にしています。

「Joe Barden Pickupの製造現場は正に完璧主義!」
PCI:では、ジョー・ペリー、ブルース・スプリングスティーン達が愛用するJoe Barden Pickupの製造現場に迫りたいと思います。

Joe:どうぞ。少人数でやっている小さなメーカーですから量産はできませんが、品質には自信があります。Joe Barden Pickupsのブレードはこの様に1つ1つ手作業で完璧な精度を出す様にし鏡の様になるまで磨かれています。

PCI:このブレードでコイルを作っていく訳ですね。

Joe:こちらがワインディング・マシーンです。

PCI:使用するワイヤーのコーティングはウレタンですか?

Joe:ウレタンとナイロンの2重コーティングとなっています。ワイヤーについては大変神経を使っています。ワイヤーの外径の許容差を大変厳しいものにしているので、私の所へ出すスプールはメーカーの検査合格品からさらに選別して厳選されたものを送ってもらっています。メーカーによると私の所へ出せるものは、35スプール在庫あるとするとその中のせいぜい1スプールしか無いとのことです。

PCI:ワイヤーのメーカーではどの様にあなたの所へ送るワイヤーを選別するのでしょうか?

Joe:レーザーで外径のばらつきなどを検査し、「42ゲージ・ジョー・バーデン・許容差」という厳しい基準でベストの中のベストのワイヤーのみうちへ出荷されるシステムが確立しています。ニュー・ハンプシャー州にあるメーカーで長い付き合いになります。

PCI:スペックの許容差は何%程度なんでしょうか?

Joe:コイルのスペック許容差、それからピックアップ本体の電気的、機械的スペック許容差は公称±1% と言っておりますが、実際の管理数字は±0.3%です。ピックアップ製造業界の標準は±20%だそうですから、我々は60倍の精度を常に保っていることになります。

PCI:これはワイヤーの外径の許容差だけでなく全てですか?

Joe:そうです。ワイヤーの外径、インダクタンス、抵抗値など全てのスペックの許容差が±0.3%ということです。パーフェクトに近い数字です。5年前に買ったピックアップも今買ったものも全く同じ特性を出します。それからこれはあまり詳しくは話せませんが、我々のコイルはワシントンDCのアメリカ連邦政府のある機関にも納入されています。これだけの高い精度でコイルを製作できるメーカーがこの近辺に無いからだそうです。

PCI:このワインディング・マシーンは特別なものですか?

Joe:何ヶ所か特注で改造された部分ありますが、基本的にはレオ・フェンダーなどが使っていたものと同じです。ジグはサンタ・バーバラにいた時に作りました。

PCI:カリフォルニア州サンタバーバラにいたんですね?

Joe:はい、1983年の夏から84年の1月まで、サンタバーバラのFactor BassというメーカーでPhilip Kubicki(フィリップ・クビキ)と一緒に働き、オリジナル・ベースピックアップを開発、設計しました。

PCI:サンタバーバラと言えば、ピックアップメーカー、Seymore Duncan(シーモア・ダンカン)のすぐ近くですよね?

Joe:そうです。私がサンタバーバラにいた時、ダンカンが私のダブルブレード・ピックアップをコピーしたんです。この話はまた後でゆっくり説明します。ワインディング・マシーンの話に戻りますが、機械そのものは他のメーカーにあるものと大きく変わりませんが、我々のワインディング・マシーンのスピードははるかに他社より遅いのです。ワイヤーを決して強く引っ張って緊張させない様にしているんです。

PCI:敢えてスピードを極端に遅くしているということですか?

Joe:そうです。多くのピックアップメーカーのワインディング・マシーンは生産性を上げ量産するためにスピードを速くせざるを得ません。それがワイヤーを必要以上に引っ張ることになりコイルの一貫性が保てなくなるんです。ジョー・バーデン・ピックアップとダンカンやディマジオのピックアップとの違いは、マイクロフォンで言うとノイマン(Newmann)とシュア(Shure)の比較ということになるでしょうか?

 

PCI:なるほど、分かり易いです。ワインディングのスピードを速くするとコイルの一貫性が損なわれるというのは、1つ1つのピックアップのサウンドが異なってしまうということですね。

Joe:そうです。ジョー・バーデン・ピックアップの場合は、常にどのピックアップも同じ特性を正確に出してくれるんです。スペック許容差±0.3%ですから。許容差が±20%と大きい量産メーカーのピックアップの場合、それを使う方々も、少々サウンドがピックアップごとに変わっても気にされないのかもしれません。それはそれでいいのです。ただ、我々の場合は、サウンドの違いを厳しく追及されるプロのユーザーが多いのでシビアな生産管理が要求されるのです。例えば S-Deluxe Joe Perry Bridgeと標準品のS-Deluxe Bridge ピックアップを比較すると、スペックの違いは約7%のみです。(PCI:製品説明はこちらへ)それでもジョー・ペリーや彼のサウンドを出そうとされるユーザーにとっては大きなサウンドの違いとなるのです。スペックの許容差が±20%もある他のメーカーではこの作り分けは不可能かもしれませんね。

PCI:ピックアップの品質、特性の一貫性を出すポイントはワインディングのスピードということですね?

Joe:そう、それとテンションと先に言いましたワイヤー自体の品質とワイヤーの外径の均一性です。ワイヤーの外径がスプールの最初と中間と最後で若干違うということを気にしています。それからジョー・バーデン・ピックアップでは常に新しいワイヤーしか使いません。製造されて2年も3年も倉庫に置かれていたワイヤーは、スプールの重みで長い間プレッシャーを受けてきて場合によってはコイルにするのに最悪な場合もあります。我々は製造に必要な分だけJUST IN TIME でいつもフレッシュなワイヤーを調達しています。どんなに古くても製造後3ヶ月以上のワイヤーはここにはありません。

PCI:こちらは新製品の白のストラト用ピックアップのサンプルですね。

Joe:そうです。ただ材料の耐久性が充分で無いんです。違う材料メーカーと交渉中です。ここで妥協する訳にはいきませんので、きちんとした物にしてから改めてまた連絡します。

PCI:日本でも楽しみにしているお客さん多いのでできるだけ早くお願いします。こちらがWAX POTですね?

Joe:そう、今全種類のピックアップがここに入っています。

PCI:時間はどれだけかかりますか?

Joe:約1時間はここに入れておきます。

PCI:温度は?

Joe:摂氏約90度です。これが使っているワックスです。 SEX WAX と言います。

このワックスを作っているMr. Zogsもギタリストでジョーバーデン・ピックアップの愛用者なんです。僕は、若い頃スケートボードやサーフボードを作っていましたのでワックスについては結構研究しました。これは植物から作っているので安全です。パラフィンでできたワックスは体に有害ですから即刻使っている人は止めた方がいいですよ。またうちで使っているワックスはパラフィンに比べて柔らかいので簡単に磨いてきれいにできます。1990年以来、このワックス・ポットから出てピカピカに磨かれたジョー・バーデン・ピックアップが、1つ1つ手で箱に入れられ世界中のグレートギタリストに送られ続けているんです。最近ではヨーロッパのミュージシャンにも大好評です。

PCI:細部に渡ってあなたの完璧主義がよく判りました。ではオフィスに移動してこれまでの歴史、ミュージシャンとのエピソード、アンプやギターについても話を聞かせてください。
(次回をお楽しみに!!)

ジョー・バーデンの秘密(その2)はこちら
ジョー・バーデンの秘密(その3)はこちら

ジョー・バーデンの製品情報はこちら
Joe Barden Guitarsが発表されたNAMM 2003 情報はこちら
ジョー・バーデンの日本訪問記録はこちら