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2011年10月18日

第51回 スタジオで思ったこと

PCIの皆様、秋も深くなってきました。 いかがお過ごしでしょうか?

僕は相棒のシンガーBobと先月末に彼の知り合いのレコーディングスタジオにいってリードヴォーカル録ってきました。 今回はその体験についてちょっと。

まずよかったのは、行く前に彼と綿密にフレージングなど打ち合わせしておいたこと。 宅録でレコーディングの「練習」をしておいて、あの歌い方がよい、この言葉をもっとはっきりと、などかなり細部まで煮詰めておきましたから、録音する日は行って歌うだけ。 

次によかったのが、最初の30分をマイク選びに当てたこと。 せっかく色々と高いマイクやプレアンプがあるスタジオに行くのだから色々機材試してみたいというのが僕の本音だったんですが、着いてみると我々が使うのは小さいBスタジオなので、プレアンプはFOCUSRITE社一機だけ、しかもマイクはNEUMANNのTLM103といってこのメーカーのラインアップの中では一番下のもの。 このマイクはNEUMANN社の名にそぐわない音だという評判をネットで読んでいたのでちょっとギョッとして、オーナーのエンジニアの人にこのマイクなの?と訊いたら、ああ、それで問題ないと思うよ、という返答。 ちょっと食い下がって、いや、最初に幾つかマイク試してみたかったんだけど、というと、じゃもう一本チューブマイクがあるよ、とSE ElectronicsのGEMINIというマイクを出してきてくれました。 さらに15分後、メインのスタジオが空くともっと高級なWUNDER AUDIOのCM7というのを出してきてくれて、こちらの願い通り3つのマイクを試せることに。

ここでポイントなのはエンジニアの人が最初に一番安いマイクで「問題ない」と言ったこと。 他のエンジニアの人でも似たような体験がありますが、エンジニアの人たちの一番の関心は機材がちゃんと動き問題なく録音することで、また中には機材マニアであれこれ機材を試したりその道のマニアックな話をしたがりする人もいますが、「このマイクはこういう音でこういうタイプの音楽や状況に向いている」という考え方を持っている人にはあまり会ったことありません。 開口一番「どういう音楽で、どういう音が欲しい?」と訊いてくれるとありがたいのですが、どうもそれはプロデューサーの領域なのか、こっちからそれを自己主張しないと駄目なことが多いです。 もちろん日本では違うかもしれませんし、別にエンジニアの人たちが良くないというわけでもないですが、しかし「音を問題なく録音すること」と「違ったニュアンスを施してくれる機材や録音テクを駆使していい音楽を録るという」行為の間にちょっとギャップがある気が。

で、結論からいうとNEUMANNはやはり低音が腰抜けのような音で安っぽく、SEは温かみがありますが逆にちょっと高温弱すぎてバンドの中でヴォーカルが埋もれがちになるかな、という印象。 WUNDER AUDIOが一番バランスといい音質といい抜群で、最初こっちの要求をちゃんと自己主張した甲斐ありいい音で録音できました。

でも音質はいいにしてもスタジオにいって「いざ」と構えてしまうと、うちで練習しているような自然なテイクになかなかならないな、というのも本音で、いいテイク色々録れましたがやっぱり録音は自分で機材を揃えて自分がリラックスできる環境でやるのがいいな、と思いました。 バンドの録音で一番大変なのはやはりドラムですから、そこは本物のスタジオに任せるにしても、後は機材さえある程度のものを揃えれば自宅でやっても結構いい音できますから。 スタジオにいってもAPIとかNEUMANNとかAPOGEEとかNEVEのクローンだとか、要するに揃ってる機材というのはかなり似たり寄ったりのことが多いので(エレキギターとなるとどこでも必ずSHUREのSM57が出てきますし)、音楽のタイプと演奏者の数、種類がかなり限定できる宅録でしたら要するにその限られたバリエーションに対応できる範囲での機材があればいいわけですから、予算にはもちろん限りありますが一般のスタジオに劣らない程度の機材を所有することは可能なわけです。 もっと難しいの音響など録音用の部屋、空間を作ることですが、これもアメリカは広いところなので日本よりは問題ではないと思います。

次回はその結果をお聞かせできるよう、ミックスがんばります。 ではまた。

投稿者 ari : 03:31