PCI USA

PCI - Prosound Communications Inc

menu


チューブアンプについて日米のエキスパートが語る!

Paul Rivera編 (2/3)

(2)クラスA、ダンブルアンプ、RIVERAの新製品について

PCI:会社を立ち上げたのは1984年ですよね?

Paul:そうです。84年の8月にフェンダーをやめて、新しいアンプのデザインを85年の5月に始めました。86年の1月には、西海岸のNAMMショーで自分のアンプ、ラックマウントタイプのを出展しました。

PCI: 冒頭で小型アンプの製造を今後されるという話をされましたが、15年前ぐらいまでは100ワットの大きいアンプがスタンダードでした。そして10年前ぐらいに30ワットのコンビネーションアンプが人気になりました。さらに数年前からはそれより小さい10ワットのアンプも人気が出てきましたよね?

Paul:それについては、答えはイエスとノーの両方です。ノーの方の答えは、ズバリ、デラックス・リバーブです。デラックス・リバーブは20ワットで、前から人気がありました。70年、80年代のスタジオミュージシャンの間ではこれが一番人気だったんです。マーシャルも人気だったけれど、やっぱりデラックス・リバーブは強かったですね。その頃でも、既に良い小型アンプはとても人気があったんです。そして全体の傾向としては言われた通り、家のガレージで使うとか、移動しなきゃならないとか、年とって大きいのが不便だとかいう理由で小型がいいっていう人が増えてきましたね。家のリビングに100ワットは必要ないでしょ? 奥さんに殺されちゃいますよ。(笑)

PCI: 最近では特に5ワットとかのより小さなアンプの人気も出てきていますね?

Paul:そのサイズでも充分音は出るんですよ。特に日本では大きいアンプはあまり必要無いかもしれませんね。リハーサルスタジオもこっちに比べて小さいですよね。音が大きいのがかっこいいと思われるけど、現実的に必要ないんだと思います。

PCI:マッチレスが出てきてから、クラスAとか30ワットコンボとかがブームになってきていますが、クラスAに対してどう思われますか?

Paul:サウンドはいいですよ。でも、合う音楽と合わない音楽があると思います。例えば、ヘビーメタルにはあまり合わないと思います。でも、ダーティーなブルース、例えば、スティービー・レイボーンとかの音楽にはクラスAのバイブが合うと思います。私が個人的にクラスAのサウンドが好きなのは、ファットなトーンだから。逆に嫌いなことは、チューブがすごく熱くなってしまうということです。トランスフォーマーも溶けるし、チューブが焦げやすいからアンプも焦げやすい。だから、耐久性が低いのはわかってもらえると思うけど、音自体はすごくいいですよ。私がクラスAを作らない理由は、お客さんの信用を失ないたくないからです。アンプの耐久性が問題です。私はあえて作りません。

PCI:あなたのアンプもクラスAタイプと呼ぶ人がいますが、そうではないんですよね?

Paul:そう、我々のアンプはクラスAではありません。

PCI: AC30はクラスAのサウンドと良く言われますが、クラスAではないんですね?

Paul:クラスABで、クラスAではありません。実を言うと、本当のクラスAアンプというのはほとんど誰も作ってません。 

PCI:本当のクラスAのアンプを作ろうとすると、10 wat程度の小さめの出力になると聞いていますが?

Paul:大きな出力で作ることもできますが、その分大変大きなトランスとドライバーが必要だし多くの熱も出ます。トランスは3つ4つ必要になるんじゃないかな? クラスAのアンプが聴きたいのなら、秋葉原に行って、一万円ぐらいの10ワットのアンプを聴いてみればいいですよ。あれがクラスAアンプです。

PCI:Fender ChampはクラスAと言えるのでしょうか?

Paul:うーん、そうですね〜、あれはクラスAと呼べると思います。技術的に見るとクラスAですね。

PCI: あなたの言うクラスAアンプとは?

Paul:うーん、定義となるとRCAのレディオトロンのマニュアルをコピーすればいいですよ。グリッドの電流とクラスの識別が書いてあります。まあそれは長いテクニカルな説明になります。

PCI:それでは、現在市場で販売されているクラスAと呼ばれるほとんどのアンプは、実際は技術的にはクラスAではないということですね?

Paul:そうです。

PCI:クラスAのような音が出ると言うことですね?

Paul:そうですね。一般ユーザーにとっては混乱し易いですね。お客さんとの会話でもよくクラスAのことが出てきますが、最近ではお客さんにそれは実はクラスAじゃないんだとはあえて言いません。相手を混乱させるだけですから。だた、我々はクラスAは作っていません、と言うだけです。クラスAを作らない理由は、耐久性が悪いためです。

PCI:クラスAイコール直ちに良いサウンドと言う訳ではありませんよね。(クラスAについて、Dr.Z AmpやGroove Tubeの説明はこちらでご覧下さい。)

Paul:そこが消費者の習性ですね。「クラスA」のように、なにかキャッチとなる言葉があるとそれに執着しやすい。その方が安心だしわかっているように見られるからです。アメリカではそういう言葉のことをBuzz Wordsと言います。Buzz Wordsばかりをあまり覚えると本質が分からなくなって危ないですよ。

PCI:ダンブルアンプについてはどう思われますか?

Paul:私にとってダンブルは特別なものです。ファットなフェンダーなんですよね。サーキットや昔のダンブルをみてもトランスフォーマーはフェンダーのものを使っています。技術的に言うと何も特別なところはないのですが、彼独特のサウンドとフィーリングを持っていますよね。でも、これを買う人は使うだけでロベン・フォードやラリー・カールトンの音が出せると思っていますが、実際に使ってみるとラリーみたいな音を出すのは本当に難しいと思います。ダンブルを使いこなすにはプレイヤーの才能がかなり必要です。それも彼らのように大きな音でプレイするには特に。ラリーやロべンを見てみると、かなり大きい音で使うことを前提に設定してあります。アンプの全体の特性をフルに使っていますよ。まあ、ダンブルアンプから良い音を出せるかどうかはプレーヤーの腕次第ということでしょうか。ロべンが壊れたアンプでプレイしているところを見たことがあるけどそれでもかなりいい音を出していましたから。(笑)

PCI:ロベンもラリーもPCIではインタビューをさせて頂きました。(ロベン・フォードのインタビューはこちら。ラリー・カールトンのインタビューはこちらロべンは本当にダンブルっていう音で、ラリーはそんなにダンブルがかっていないというか結構ナチュラルな感じですよね。

Paul:やっぱり、ダンブルの音というよりプレイヤーの音、ロベンの音、ラリーの音だと思いますよ。

PCI:トランジスターのデジタルアンプの人気がでてきています。デジタルアンプは安いけれど音質があまり良くないと一般的に思われています。チューブアンプ製造者として他に良い材料について何か可能性はあると思いますか? チューブの他に良い材料の可能性は?

Paul:あと10年もすれば、アンプのプロセッサースピードとパワーとソフトウェアの改良でデジタルアンプのサウンドはすごく良くなると思いますよ。10年たったら今とはかなり状況が変わっていると思います。10年前のデジタルアンプと今のをと比較するとかなり違っていますよね。開発者、設計者の世代が変ると音もかなり変わってくると思います。しかし私が最近発見したことは、若い人達の多くは、良いアンプの音がどういう音なのかを知らないということです。それが怖いところですよね。今10歳ぐらいの子供がいるとします。彼の母親は、$400ドル以上のアンプは買えない。彼は母親とギターセンターに行ってアンプを全部見て回りました。そして$399のLine6を繋いだら、ヘビーメタルやコーラスなど色々な音が使えました。リバーブやエコーなどもついていて、彼は、「お母さん!これいいよ!」ってね。ここで、彼の音の参考はLine6となってしまいます。その後、勉強して良い音を知る機会があるといいけれど、そうならないケースが多い。これからの私達の課題は、どうやってこういう子供達に、いい音はどういうものなのかを教えることだと思います。だから、これから私たちも小さいアンプを作っていくことにしました。私たちの未来への期待なのです。私たちの作る小さいアンプは$699ドル。Line6は$399ドルだから、$300ドルの違いです。この価格差ならば、もしかしたらあの10歳の子供は、$300ドルの違いならどこかで私たちの良いアンプを見つけられるかもしれない。あるいは2台目のアンプとして購入してくれるかもしれない、と思います。

PCI: あなたの作った最新の小さいアンプについて教えて下さい。

Paul:Clubstar(クラブスター)とPubstar(パブスター)という2機種を紹介します。どちらもKT66を使っています。これは私のとても好きなチューブのひとつです。今はとてもいい66があるんですよ。前は中国製のジャンクしかなかったので作らなかったんですが、新しいエレクトロハーモニクスの66も良いです。Groove Tubeでも新しい66を出すと言っていましたね。グッドアイディアだと思いますよ。どちらも25Wです。クラブスターとパブスターの違いですが、クラブスターは使い易いチャンネルスイッチングアンプです。クリーンとディストーションチャンネルどちらもいいサウンドですよ。トーンコントロールも2つあります。パブスターはフェンダーのSuper Champキラーですよ。スーパーチャンプはフェンダーが作った中でも一番良いものですが、「まだもし私がフェンダーにいたら、2004年にスーパーチャンプはどうなっていたのか?」というのが、パブスターなんですよ。

PCI:スーパーチャンプはあなたが開発したんですよね。 

Paul:はい。私のフェンダーでのデビュー作のひとつです。

PCI:新製品のお値段は?

Paul:パブスター25Wは$699ドル、クラブスター25Wは$799ドルでアメリカでは発売される予定です。

PCI: これらのアンプはいつ発売されるのですか?

Paul:NAMMショーで1月に紹介しましたが、製造は6月から始まります。8月頃から市場に出ると思います。

PCI: 小型のアンプは大量に生産しなければ採算取れないとおっしゃってましたが、これらはシカゴで製造されるんですよね。

Paul:プロトタイプはここで作りますが、量産品はシカゴで作ります。数千台のアンプをここカリフォルニアで作ると、コストが高くなり過ぎて売値も高いものになってしまいます。

(次ページへ続く)