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2011年10月 4日

第14回:Big Business/Quadruple Single

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年の半分はツアーに出ているバンドMelvins。そのリズム隊(それ以上)として忙しているCoadyとJared。彼らのオリジナルのバンドであり、3作目、"Mind the Drift"から自分も正式加入しているのがBig Business。ここ数年3人組としてやって来たが、去年の暮れから400 Blows, CromのギターのScott Martinが加入。詳しい経緯はライナーノートを読んでもらいたい。

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ライナーノートにもあるよう、とにかく個々が他のバンド、自分はスタジオの仕事、で忙しく、このバンドの曲作りにもなかなか集中出来なかった、ライブでのジャム曲であった”Guns"、そして少しづつ書き続けて来た残りの3曲がようやく今年の始めに出来上がり、このEPを作る事が決まった。スタジオはここ数年使わせてもらっている、Entourage Studio。エンジニアは自分が担当。

01. Always Never Know When To Quit
02. Ice-Cold War
03. California Square Dance
04. Guns

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"Mind the Drift"以来自分の役目と言うのはメロディアスなギターをひいて、Coadyの暴走的ドラム、ギターの音域を踏まえたJaredのブアツイベースに違った色を加える事である。今回はそれにもう一人のギターScottが加わり、Jaredと自分の間の空間を埋めるような感じになっている。

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400 Blowsにはベースが存在しない。その為、Scottは低音を太くするような音を数年引き続けていた。この録音ではその癖を出さないようにする工夫が必要になった。そこで彼がいつも使っているMarshall JCM2000(自分の好みではない)を使わず、Coadyが所有するAmpeg V4を使い、コンパクトエフェクターの色をそのまま引き上げた感じにした。普段彼が使っているペダルもいまいちだった。そこで大きく役にたったのが、オリジナルのオプアンプ・チップを搭載した、Tubescreamerのリイシューと、このPCIでおなじみのLittle Brute Drive。もともとドロップチューニングで低音を出そうとしている上に、ベースの音が半端ではないこのバンドで低音を響かせる必要はない。Tubescreamerで中音域から高音域をあげた上に、Little Brute Driveで歪みすぎないエッジを作り出す。これが大成功。リズムギター的役割を持っているScottのギターと音域の広いベースがほどよく絡み合う。その上に自分のメロディーギターを加えられオーケストラの様に音に厚みが出る。

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CoadyはいつもMelvinsの時同様、南アフリカ産、ブビンガ木を使って作られた、TAMAのキットに、Ludwigの(14x)8インチスネアを使っている。JaredはMelvinsの時よりの中音域から高音域を大いに増やしている。ベースはアメリカ産の最近のFender Jazz Bassを使用、Crate GX212が高音、Sunn Beta Leadが中音、そしてGallien-Krueger 1001RBが低音を出す役割になっている。

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Pigtronix Mothershipのリングモジュレーターを使用したイントロ(0:07)、0:26からの早弾きをしまくった”Always Never Know When To Quit”。中間部、2:24-3:13あたりではデジタルリバーブのリバーブタイムを増やし、ミックスもウェットに設定してメロディーを弾いている。ほとんどが単音だがそのノビが前後の音と重なってハーモニーの様になる。

自分のギター演奏はスライドギターのみの”Always Never Know When To Quit”。ここでもリバーブの使い方を工夫しストリングを奏でる感じで弾いている。この曲ではバッキングボーカルにも力を入れた。

”California Square Dance”では、Dumlop製のシルバーフィンガーピックを親指、人差し指、中指にはめ、バンジョー演奏の要領でアルペジオを弾いている。Scottはリズムを中心に弾いているが、0:28-0:38、1:29-1:39でメロディーラインを弾いている。この時に利用しているのはElectro-Harmonix POG 2である。倍音の調整によりオルガンの様な音を奏でている。3:00でのエンディングではJaredもPOGを使っている。エンディングのフェイドアウトの所では、一つのギターを録音している時、スタジオの窓を開けていた為、外の小鳥が鳴いているのがかすかに聴こえる。

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アメリカ銃社会をちょっと皮肉った曲、Guns。多くの箇所でDigitech Talkerをボーコダーとして利用して、Jaredが”Guns"と言っている。自分はリードギターがメインである。1:57からのソロは自分のギター暦の中でもっともスカッとするものとなったと思っている。3:48で聴かれるのは鉄製の定規を弦にはさみ、それをタイミングを合わせてはじいている。4:04あたりではその定規を弦をピックスクラッチのようにして雑音を出し、それの音を上下して緊迫感を演出している。

自分が参加して初のアルバム、"Mind the Drift"も色々ギターの音や演奏を工夫して、他の二人の存在感に負けないようしたつもり。その前の2人組の時の2枚のアルバム(彼らの旧友達がギターを弾いてがメンバーではないのでギターの音量は小さい)、4人になったこのEPと聴き比べてどう変わって行ってるか、興味深く考えてもらえれば嬉しい。

投稿者 toshik : 2011年10月 4日 02:01