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Don Robertsインタビュー

 

<ドンロバーツは今年55才で長年マンハッタントランスファーやブライアンセッツァーのバックでサックスを吹いていたロスでは名のしれたプレイヤーである。 大の日本びいきで奥さんも日本人。 家には日本風呂まである。>

PCI:それでは、インタビューを始めさせて頂きます。 我々のホームページに、アメリカのミュージシャンの裏話を載せたいと思っています。 その一人として選ばさせて頂きました。 ざっくばらんにお話を聞かせて頂けると有り難いです。

Don:実は、1月か2月にブライアンセッツァーと一緒に日本へツアーに行くんだよ。

Yuko(ドンの奥さん):ちょっと待ったぁ〜! そんなの一言も聞いてないわよ!

Don:マジ!? 言ってなかったか? 2週間ほど、ブライアンと日本でコンサートあるんだ。 言ったはずだけどなぁ〜

Yuko:いいえ!聞いてません!!

PCI&Don:(大爆笑!!)

Don:じゃー東京でブライアンを紹介するよ。 日本でブライアンセッツァーって人気ある?

PCI:今でも人気ありますよ。 日本ではどんな所でコンサートをなさるんですか?

Don:大阪では2000人は入るような場所でやるんだ。 マンハッタントランスファーとやっていた時もよく日本へ行ったよ。 そこでYukoと知り会ったんだ。

PCI:ブライアンセッツァーのことを教えて下さいますか?

Don:彼は50年代が本当に好きなんだ。 車は6台持ってるけど全部50年代の車だよ。 まったくギターにエフェクターなんか使わないかもね。 アンプもフェンダーの古いやつだしさ。 チューブアンプのいいの見せたら喜ぶだろうね。 東京で是非一緒にまた会おうよ! 日本でのスケジュールは彼のホームページを見れば判るよ。 

(以下URL)http://www.briansetzer.net/tour_main.html

Don:今、ミュージシャンについてのエッセイを書いてるんだけど、マンハッタントランスファーのエピソードで面 白いのがあるんだけど、聞きたい?

PCI:是非お願いします。

Don:マンハタントランスファーとヨーロッパのツアーに行った時の話しだ。 ある日、山の上にある野外レストラントに行って、そこでポーク料理を食べたんだ。 ロードマネージャーは女性だったんだけど、『可愛そうなブタさん』と言ってたよ。 そして、ホテルに帰った。 その晩、電話があると言われてフロントデスクに行ったら間違いだった。 ちょっと不信に思った。 次の朝起きてトイレに行ったら、ブタの頭が便器に置いてあって、僕の方をジッと見ていた。 あの時はびっくりしたよ。 昨日の夜、メッセージを聞きに行ったスキに誰かが仕組んだんだろう。 ロードマネージャーとシンガー二人、ジャニスとシェリルがやったに違いない。 それで僕はブタの頭をタオルに包んでバッグに入れて、マンハッタントランスファーのメンバーやスタッフに『僕の部屋になにか忘れ物をしたか?』と聞いて回った。 みんな知らないと言う。 メンバーに聞いてもみんなとぼける。 うまく打ちあわせしてたもんだよ。 ここにその忘れ物があるよとバッグを見せても、みんなとぼけるんだ。 それから僕はそのバッグを持ち歩いたんだ。 飛行機に乗ってる時も、車で移動してる時もずっと持ち歩いていた。 それから1週間以上が経った。 僕がブタの頭を持ち歩いていることを、みんな知っているはずだった。 ある日、ロードマネージャーがたまり兼ねて、『ブタの頭を1週間も持ち歩いてたの!?』と言った。 『僕は君たちになにか忘れ物をしたかとは聞いたが、ブタの頭を持っているなんて一言も言わなかったぜ。 やっぱり、君が犯人か〜』 と言ったら、彼女はハッとして『しまった』と言った。あの時は面 白かったなぁ〜

実は本当は、ブタの頭は持ってなかったよ。 マンハッタントランスファーとはこんな馬鹿をやる間柄だったんだよ。 今でもいい友達さ。

PCI:たいへん面白いお話ですねぇ〜 マンハッタントランスファーと言えば15年ほど前にBoy from New York City, Twilight Zoneが大ヒットしましたよねぇ〜

Don:そう。これはジェイグレイドンがプロデュースしたんだ。 彼ともよく仕事をしたよ。

PCI:マンハッタントランスファーとはどれくらいプレイされてたんですか?

Don:15年やったよ。 10年前にやめて、ブライアンとか、別 の人達の仕事が増えたんだ。 

PCI:マンハッタントランスファーとの仕事が最初のプロとしての仕事だったんですか?

Don:いやいや、もっと前だよ。 ティーンネージャーの時にサーフバンドで吹いていたんだ。 Bulcanes という名前のバンドで、『キャピ トルレコード』からレコードも発売されたんだよ。17才の時だった。 それからジャズのビッグバンドでも吹く様になり、しばらく両方やってたよ。 

PCI:このスタジオシティーで生まれ育ったっんですか?

Don:そうだよ。 でも一時しばらくシカゴへ行って、『CHICAGO』とプレイをして、ツアーに行ったり、レコーディングにも参加したんだ。 でも、僕の名前はその頃載らなかったなぁ〜 

PCI:シャドーミュージシャンですね?

Don:そう。 助っ人で色んなバンドで吹いたよ。 トムスコットもその頃、僕と一緒で助っ人をしていたよ。 

PCI:レコーディングエンジニアで、我々の友人のケンジナカイもトムスコットと一緒に仕事をしてますが、ご存知ですか?

Don:うん、よく知ってるよ。 それから、ケニーロギンスやエルヴィスプレスリーとも数年一緒に仕事をしたよ。 9年前からは、ブライアンセッツァーとの仕事が多くなり、日本にもよく行く様になった。 レコーディングもいつも一緒さ。 

PCI:ジェイグレイドンとも古くからのお友達ですよね?

Don:そう。 ジェイとは大学で一緒にバンドで演奏してた。 マンハッタントランスファーと仕事してる時も、プロデューサーとしてのジェイと一緒によく仕事をしたね。 家も近いんで良く会うよ。 

PCI:このスタジオシティーには有名なミュージシャンがたくさん住んでるんですねぇ〜

Don:そうだね。 ほとんどみんな知ってるよ。 ロサンゼルスはやっぱり音楽で仕事をするには大きなマーケットだからね。 ただ、ジャズミュージシャンはナッシュビルやニューヨークに多く行ってしまったね。

PCI:現在はブライアンセッツァーとの仕事がメインですか?

Don:イヤ、それだけじゃなくて、ジャズミュージシャンがレコーディングでサックスを吹いてくれと言うんだったらいつでも行くんだよ。 なんせ、 すごい助っ人サックスプレイヤーだからね! 有名でも無名でも本当のジャズの演奏、レコーディングであれば、助っ人やるよ。 

PCI:日本へは、年に何回行かれるんですか?

Don:年に1回は行くよ。 一緒にやるミュージシャンによってお客の反応が全然違うね。 マンハッタントランスファーの時は静かだけど、ブライアンセッツァーの時はワイルドなんだよ。 まるで、ヘビーメタルロックの観客みたいだよ。 でも、こっちのロカビリーファンは静かなんだよねぇ〜  最近の日本のロカビリーファンは変わってきたと思うよ。 すべての面 で日本は大きく変わってきたのかな。  でもI love Japan! 特に、日本食は大好きでソバは毎日食べるよ。 でも、おでんはあまり好きじゃない。 アメリカのミュージシャンには日本を好きな連中も多いし、ビジネスとしても、日本は重要なマーケットなんだ。 みんな、日本の変化には興味を持っているよ。

PCI:日本のミュージシャンも、アメリカのミュージシャンの動きにたいへん興味を持っています。 我々が双方の掛け橋になることができれば、ありがたいですね。 

Don:そうだね。でもレコードを買う時、例えば、マイルスデイビスやジョンコルトレーンの場合、音楽を気に入って買うというよりも、彼らのルックスや、イメージで買うお客さんがたくさんいると聞いたことがあるよ。マーケティング戦略も重要な要素だね。

PCI:そうですね。 最近日本ではラップがはやってますが、アメリカのラップとは異なり、日本独特のイメージがマーケティングされてる様ですね。 

Don:僕はアメリカで黒人音楽としてラップが誕生してから知ってるけど、ずいぶん変化してきたよね。 今やたくさんの白人ラッパーですばらしい人達がいる。 

PCI:そうですね。 ジャズでも最初は黒人音楽だったんでしょうけど、デビッドサンボーンやトムスコットなど今や関係無いですね。 でも日本ではこの二人はジャズというよりもイージーリスニングの様なイメージがあるんですがどう思いますか?

Don:僕はトムスコットと一緒のハイスクールだったんだけど、彼は「Tribute to コルトレーン」というアルバムを出している。 60年代に彼はもっと人気が出るサックスの吹き方を編み出した。 彼は頭がいいから売れる音楽がなんなのか判ったんだろうね。 それからジャズはどんどん変わっていき、僕が若い頃聞いたのと、今のジャズとはだいぶ違うよね。 でも60年代はサックスプレイヤーにはみんな個性があったよね。 今は誰もが同じサウンドを出す様な気がする。 マイケルブレッカーとデヴィッド・サンボーンは素晴らしいプレイヤーだけど、残念なのは、皆が2人のコピーばかりすることだね。誰のプレイを聞いてもみんなブレッカーかサンボーンみたいなんだよ。プロデューサーの意向やマーケティングの方針が優先して同じになってしまったんだと思う。 

PCI:あなたの目からみると、それらはもうジャズじゃないですよね?

Don:そうだね。 ジャズで一番大切なことはインディビジュアリティーなんだよ。 今のサックスの音を僕は『ハッピーサキソフォン』と読んでいる。 同じ音、同じのり、同じ音符さ。 ジャズとは言えないね。 でも生活するためにやらなければならないんだろう。 だから、グレートなミュージシャンはみんな貧乏で、レコードを出せない。 それで、そういうジャズミュージシャンは活動の場所を求めて、ニューヨークへ行ってしまったんだ。 

PCI:あなたが影響をうけたミュージシャンは誰ですか?

Don:ジョンコルトレーン、スタンゲッツなど50年代のあの頃のみんなから影響受けているよ。  彼らみんなお互いに影響しあってジャズが発展したんだ。

PCI:今のミュージシャン達との違いは何ですか?

Don:音楽だけでなく精神的な影響を皆に与える強烈な個性、特徴があった。 宗教みたいなもので、私の言う本当のミュージシャンというのは、ミュージシャンらしくないことかもしれないね。

PCI:なるほど。現在活躍しているミュージシャンで敢えて気に入っている人を選ぶとしたら誰ですか?

Don:サックスでは、マイケルブレッカー、ジョージコールマンとスタンリーターンティンだね。それからトランペットのチェットベーカー。 自分のスタイルを持っているよ。 音を聞けばすぐ彼だと判る。 ギタリストでは、ジョーパスかな。やはり自分のスタイルを持ち続けているブライアンセッツァーはすごいね。 少なくとも長い間ロカビリーのファンを持ち続けている。 最近では音楽はどんどん変わっていき、使い捨ての時代になっているので、本物が生き残るのが難しくなってきたよね。

こんな話は音楽産業にいる皆さんにとってはつまらないかもね。 

PCI:いえ。本音を聞かせて頂いて有り難いです。 我々はアメリカのミュージシャンの生の声をできるだけ正確に日本へ伝えていこうと思っているので。

Don:それと私はサックスプレイヤーなので、ギタリスト、リズムセクション、キーボードなんかと比べると別 の世界にいるかもしれないね。 日本へ行くと、ギタリストやベーシストはよく目立ち、商売になるのでいろんな業者から楽器を送ってきたりそりゃ大変だよ。 音楽活動と直接関係無いビジネスに巻き込まれてしまう様だね。 ブライアンやマンハッタントランスファーと日本へ行くと、ギタリストやベーシストは15本も新品の楽器を寄付された事もあった。 僕なんかサウンドチェックで僕のサックスはどこだ、て聞いてもどこにもありゃしない。(笑)

PCI:そうやって日本の業者からもらった大量のギターやベースは、皆さん日本離れても使われるのですか?

Don:もちろん使わないよ(笑)。 クローゼットに山になるだけだよ。 もったいない話。

PCI:サックスは何を使ってみえるのですか?

Don:ずっとセルマーを使っているよ。 だいぶ古いので、ペイントしなくっちゃいけないんだろうけど、音が変わっちゃうのが怖くてやってないんだ。 金をかけてペイントかめっきし直して音が変わってしまったら大変だから。 いっそ金メッキにして、物としての価値を上げれば、もし音が変わって使えなくなっても、高く売れるかもしれないのでそうしようかな。(笑) 最近の製品は音が変わった。 製品の何がどう違うかは判らないが、昔のセルマーの音が気に入っているので、みすぼらしいけど、古いのをずっと使っている。 ホーンは空気を動かして音を出すのでずっとまだアナログだよね。 デジタルではまだ本当のホーンのサウンドは作れないだろうね。 コンピュータとデジタル技術によって、誰でも、自宅でCDを作れる様になったのは皆に表現のチャンスができて素晴らしいことだけど、それで本物のサウンドを出すミュージシャンが生き残れなくなっていくとしたら寂しいね。 ニューヨークのタワーレコードには1千万枚のCDの在庫があるそうだよ。 本物を探すのが難しくなったかもしれないね。 それでますます、レコード会社はCDを売るために、音楽そのものより、キャンペーンやイメージで需要を創りだそうとするんだね。 そういう商業主義に巻き込まれたくない本物のミュージシャンもたくさんいるんだよ。 いい音楽には人種も年齢も性別 も関係ない。 少なくとも我々アメリカの本物プロミュージシャンはそういう目で見ている。 日本人だって、女性だってジャズファンを魅了するミュージシャンが出てきてもおかしくないし、そういう時代が必ず来ると思うよ。

PCI:フランクに話して頂き本当に有り難うございました。 今度はブライアンセッツァーと一緒に東京で会いましょう。

日時:2000年10月19日
場所:Don Robertsの自宅(Studio City, Los Angeles, California)
インタビュアー:PCI 三浦/堀場 (和訳:堀場)

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